あらすじ
むかしむかし、森の近くに三匹の子ぶたの兄弟が、お母さんぶたと一緒に暮らしていました。
やがて大きくなった三匹は、それぞれ自分の家を建てて暮らすことになります。
一番上の子ぶたは、早く家を完成させて遊びたくて「わらの家」を。
二番目の子ぶたは、わらより丈夫そうな「木の家」を。
そして三番目の子ぶたは、時間がかかっても安心して暮らせるようにと「レンガの家」を建てました。
ところが、森からお腹をすかせたおおかみがやってきます。
わらの家、木の家を次々と吹き飛ばしたおおかみは、三匹が逃げ込んだレンガの家にも迫ります。
三匹の子ぶたは、力を合わせておおかみに立ち向かうことになるのでした。
本文
むかしむかし、森の近くの緑豊かな場所に、お母さんぶたと三匹の子ぶたが暮らしていました。
三匹はとても仲のよい兄弟でした。
けれど、性格はそれぞれ違います。
一番上の子ぶたは、とにかく遊ぶことが大好き。
天気がよければ外へ飛び出して、野原を走り回っていました。
二番目の子ぶたは、一番上の兄より少し慎重です。
遊ぶことも好きですが、
「せっかくなら、ちゃんとしたものを作りたい。」
と考えるタイプでした。
そして三番目の子ぶたは、何をするにもじっくり考えます。
時間がかかっても、最後まで丁寧にやり遂げようとする子ぶたでした。
ある日のことです。
お母さんぶたが三匹を呼びました。
「みんな、ちょっとこちらへいらっしゃい。」
「なあに?」
三匹が集まると、お母さんぶたは言いました。
「あなたたちも、ずいぶん大きくなりました。」
「そろそろ、それぞれ自分の家を建てて暮らしてみましょう。」
三匹は顔を見合わせました。
「自分の家?」
「好きな家を作っていいの?」
「もちろん。」
お母さんぶたは笑いました。
「でも、家は毎日を過ごす大切な場所です。」
「どんな家なら安心して暮らせるのか、よく考えて作るのですよ。」
「はーい!」
三匹は元気よく返事をしました。
こうして三匹の子ぶたは、それぞれ家を建てることになりました。
一番上の子ぶたは、さっそく材料を探し始めました。
すると道ばたに、たくさんのわらが積んであります。
「これだ!」
一番上の子ぶたは目を輝かせました。
「わらなら軽いし、すぐに家が作れるぞ。」
さっそく、わらを運び始めました。
よいしょ。
よいしょ。
束ねたわらを並べ、屋根にもたっぷり積みます。
あっという間に、小さな家ができあがりました。
「完成!」
一番上の子ぶたは大喜びです。
「こんなに早くできた!」
家を作り終えると、さっそく野原へ遊びに行きました。
「家づくりなんて簡単だな。」
一方、二番目の子ぶたも材料を探していました。
「わらより、もう少し丈夫なものがいいな。」
森の近くへ行くと、木の枝や丸太がたくさんあります。
「そうだ。」
「木で作ろう。」
二番目の子ぶたは木を運び、柱を立てました。
とん。
とん。
かん。
かん。
一番上の子ぶたの家より時間はかかりましたが、しっかりした木の家ができました。
「よし、完成!」
二番目の子ぶたは満足そうです。
「わらよりずっと丈夫だ。」
そこへ、一番上の子ぶたが遊びにやってきました。
「まだ家を作っていたの?」
「今できたところだよ。」
「じゃあ、一緒に遊ぼう!」
「うん!」
二匹は野原へ走っていきました。
そのころ。
三番目の子ぶたは、まだ材料を集めていました。
選んだのは――。
レンガです。
一番上と二番目の子ぶたが遊びから帰ってくると、三番目の子ぶたが重いレンガを運んでいました。
「まだ作っているの?」
一番上の子ぶたが驚きます。
「レンガなんて重いじゃないか。」
二番目の子ぶたも言いました。
「木なら、もっと早くできるよ。」
三番目の子ぶたは汗をぬぐいました。
「そうだね。」
「でも、風が強い日でも壊れない家にしたいんだ。」
一番上の子ぶたは笑いました。
「そんなに頑張らなくても大丈夫だよ。」
「早く遊ぼうよ。」
けれど、三番目の子ぶたは首を横に振りました。
「家が完成してから遊ぶよ。」
一つ。
また一つ。
レンガを積みます。
ずれないように、しっかり確かめながら。
一段。
また一段。
雨の日も。
風の日も。
三番目の子ぶたは、毎日少しずつ家を作り続けました。
ようやく壁が完成すると、今度は丈夫な屋根を作ります。
窓を取りつけ、
重い扉もしっかり取りつけました。
そして――。
「できた!」
立派なレンガの家が完成しました。
三番目の子ぶたは家を見上げ、満足そうに笑いました。
「時間はかかったけど、これなら安心して暮らせそうだ。」
三匹は、それぞれ自分の家で暮らし始めました。
そんなある日のことです。
森の中を、一匹のおおかみが歩いていました。
何日もろくな食べ物にありつけず、お腹はぺこぺこです。
「腹が減ったなあ……。」
おおかみは食べ物を探しながら、森の中を歩き回りました。
すると――。
木々の向こうに、小さな家が見えました。
わらでできた家です。
そして、その家の前には一匹の子ぶたがいました。
おおかみの目がぎらりと光りました。
「子ぶただ。」
一番上の子ぶたも、おおかみに気づきました。
「えっ……。」
お母さんぶたから、森にはおおかみがいると聞いたことがあります。
子ぶたは大急ぎで家へ飛び込みました。
ばたん!
扉を閉めます。
どくん。
どくん。
胸が大きく鳴りました。
やがて――。
ざっ。
ざっ。
家の外から足音が聞こえてきました。
そして。
コン。
コン。
「子ぶたくん。」
低い声がしました。
「家に入れておくれ。」
子ぶたは扉の向こうへ叫びました。
「いやだ!」
「絶対に入れないぞ!」
おおかみはにやりと笑いました。
「そうか。」
「それなら……。」
おおかみは大きく息を吸い込みました。
すううううう……。
子ぶたは不安そうに天井を見上げました。
「何をする気だ……?」
次の瞬間。
「ふーーーーっ!」
びゅうううう!
ものすごい風が、わらの家に吹きつけました。
がさがさ!
ばさばさばさ!
「わあっ!」
屋根のわらが飛んでいきます。
「もう一度だ!」
おおかみはさらに大きく息を吸いました。
「ふーーーーーーっ!」
ばさあああっ!
わらの家は、あっという間に吹き飛ばされてしまいました。
「大変だ!」
一番上の子ぶたは夢中で走りました。
「助けてー!」
向かったのは、二番目の子ぶたの木の家です。
「どうしたの?」
「おおかみだ!」
「家を吹き飛ばされた!」
二番目の子ぶたは驚きました。
「早く入って!」
二匹は木の家へ入り、しっかり扉を閉めました。
そのすぐあと。
ざっ。
ざっ。
ざっ。
おおかみが追いついてきました。
コン。
コン。
「子ぶたたち。」
「ここを開けておくれ。」
二匹は声をそろえました。
「いやだ!」
「絶対に開けない!」
「そうか。」
おおかみは木の家を見上げました。
「さっきの家よりは丈夫そうだな。」
「でも、これくらいなら――。」
すううううう……。
おおかみは胸いっぱいに息を吸い込みました。
「ふーーーーっ!」
びゅうううう!
木の家が揺れました。
ぎしっ。
ぎしぎし。
一番上の子ぶたが震えます。
「だ、大丈夫かな?」
二番目の子ぶたも不安そうです。
「木だから、わらより丈夫なはずだよ。」
ところが、おおかみはもう一度大きく息を吸いました。
「ふーーーーーーっ!」
みしっ。
ばきっ。
壁の板が一本外れました。
「えっ?」
さらに――。
「ふーーーーーーーーっ!」
ばきばきばきっ!
「うわあ!」
木の家も崩れてしまいました。
「逃げろ!」
二匹は家から飛び出しました。
向かう先は一つです。
三番目の子ぶたのレンガの家。
「助けて!」
「おおかみが来た!」
レンガの家の扉が開きました。
「早く入って!」
三番目の子ぶたは二匹を中へ入れると、重い扉をしっかり閉めました。
一番上の子ぶたは息を切らしています。
「わらの家が吹き飛ばされた。」
二番目の子ぶたも言いました。
「木の家も壊されちゃった。」
三番目の子ぶたは二匹を落ち着かせました。
「大丈夫。」
「この家は、レンガを一つずつしっかり積んで作ったんだ。」
「三匹で一緒にいよう。」
やがて。
ざっ。
ざっ。
ざっ。
おおかみの足音が聞こえてきました。
足音は家の前で止まりました。
しん……。
三匹は息をひそめます。
コン。
コン。
コン。
「子ぶたたち。」
「そこにいるのはわかっているぞ。」
三匹は答えません。
おおかみは家を見上げました。
「今度はレンガか。」
そして大きく息を吸いました。
すううううううう……。
「ふーーーーーーっ!」
びゅうううう!
ものすごい風が吹きつけます。
けれど――。
レンガの家は動きません。
「むっ。」
おおかみはさらに息を吸いました。
「ふーーーーーーーーっ!」
木々の枝が揺れ、
落ち葉が空へ舞い上がります。
それでも。
レンガの家は、びくともしません。
家の中で、一番上の子ぶたが目を丸くしました。
「すごい……。」
二番目の子ぶたも壁を見ました。
「全然揺れない。」
三番目の子ぶたは言いました。
「丈夫に作っておいてよかった。」
外では、おおかみが息を切らしていました。
「はあ……はあ……。」
「なんて丈夫な家なんだ。」
それでも、おおかみは諦めません。
家の周りをぐるぐる歩き始めました。
「どこかに入れるところはないか?」
窓は閉まっています。
扉もしっかりしています。
壁はもちろんレンガです。
そのとき――。
おおかみは屋根を見上げました。
「ん?」
煙突があります。
おおかみの口元に、にやりと笑みが浮かびました。
「そうだ。」
「煙突から入ればいい。」
おおかみはそっと家の裏へ回りました。
家の中では、三番目の子ぶたが窓から様子を見ていました。
「あれ?」
「おおかみがいなくなった。」
一番上の子ぶたはほっとしました。
「諦めたんじゃない?」
けれど三番目の子ぶたは首を横に振りました。
「いや。」
「まだ安心しない方がいい。」
三匹は静かに耳を澄ませました。
すると――。
かりっ。
かりっ。
屋根の上から、小さな音が聞こえてきました。
「何の音?」
かりっ。
ずるっ。
ぎしっ。
三匹は顔を見合わせました。
三番目の子ぶたが天井を見上げます。
「屋根に登ってるんだ。」
そして、煙突を見ました。
「あっ!」
三匹はすぐに気づきました。
「煙突から入ってくるつもりだ!」
「どうしよう!」
三番目の子ぶたは少し考えました。
そして、部屋にある大きなお鍋を見ました。
「そうだ。」
三匹は力を合わせて、大きなお鍋を暖炉の下へ運びました。
よいしょ。
よいしょ。
中へ水を入れ、火をつけます。
ぱちぱち。
炎が燃えます。
やがて、お湯から湯気が立ち始めました。
そのころ、おおかみは屋根の上にいました。
「これで子ぶたたちは逃げられないぞ。」
煙突の中をのぞき込みます。
暗くて下はよく見えません。
「よし。」
おおかみは足から、そろりそろりと煙突へ入りました。
ずるっ。
ずるずる……。
家の中では、三匹の子ぶたが息をひそめています。
煙突の中から音が聞こえます。
ざざっ。
ざざざ……。
少しずつ近づいてきます。
一番上の子ぶたが小さな声で言いました。
「来る……。」
二番目の子ぶたも、ごくりとつばを飲み込みました。
そして――。
おおかみの足が煙突の下から見えました。
「今だ!」
三匹が声を上げます。
おおかみは下を見ました。
「え?」
そこには湯気を上げる大きなお鍋。
「うわあああ!」
おおかみはびっくりして、慌てて煙突をよじ登りました。
夢中で屋根へ戻ると、そのまま地面へ飛び降ります。
「こんな家、もうこりごりだ!」
おおかみは森の奥へ一目散に逃げていきました。
それから二度と、三匹の子ぶたの家へ近づくことはありませんでした。
三匹は窓から、おおかみの姿が見えなくなるまで見送りました。
「行っちゃった……。」
一番上の子ぶたが、ほっと息をつきました。
二番目の子ぶたも床へ座り込みます。
「怖かった。」
三番目の子ぶたは笑いました。
「三匹とも無事でよかった。」
一番上の子ぶたは、レンガの壁を見ました。
そして言いました。
「ぼくは早く遊びたくて、すぐに作れるわらを選んだんだ。」
二番目の子ぶたも続けました。
「ぼくも、これくらい丈夫なら大丈夫だと思って木にした。」
二匹は三番目の子ぶたを見ました。
「時間がかかっても、ちゃんと作るって大切なんだね。」
三番目の子ぶたはうなずきました。
「でも、今日は家だけじゃなくて、三匹で力を合わせたからおおかみを追い返せたんだよ。」
「そうだね。」
「三匹一緒だったから怖くなかった。」
次の日から、三匹は壊れてしまった家の片づけを始めました。
一番上と二番目の子ぶたは、新しい家を建てることにしました。
今度は三番目の子ぶたも手伝います。
「このレンガはここ?」
「うん。まっすぐ積もう。」
「こっちはぼくが運ぶよ。」
三匹で声をかけ合いながら、少しずつ家を作りました。
急がず。
慌てず。
一つ一つ確かめながら。
やがて、三匹が安心して暮らせる丈夫な家ができました。
仕事が終わると、三匹は一緒に野原へ遊びに出かけました。
夕方になると家へ戻り、温かな食事を囲みます。
窓の外で強い風が吹く日もありました。
びゅううう……。
けれど、丈夫な家はびくともしません。
一番上の子ぶたが笑いました。
「これなら安心だね。」
二番目の子ぶたもうなずきます。
「頑張って作ってよかった。」
三番目の子ぶたは、二匹を見て笑いました。
それから三匹は、困ったときには助け合い、何かを始めるときにはよく考えながら、仲良く暮らしていきました。
おしまい。
登場人物
一番上の子ぶた
遊ぶことが大好きな子ぶた。早く家を完成させたくて、簡単に作れるわらの家を建てます。おおかみに家を吹き飛ばされた経験から、家をしっかり作ることの大切さを学びます。
二番目の子ぶた
一番上の子ぶたより少し慎重で、わらより丈夫な木の家を建てます。しかし、おおかみの力には耐えられず、さらに丈夫な家を作る必要があることに気づきます。
三番目の子ぶた
時間や手間がかかっても、安全に暮らせる家を作ろうと考え、レンガを一つずつ丁寧に積み上げます。兄弟が逃げてきたときには家へ迎え入れ、三匹で力を合わせておおかみに立ち向かいます。
おおかみ
森に住む、お腹をすかせたおおかみ。わらの家と木の家を息で吹き飛ばしますが、丈夫なレンガの家には歯が立たず、煙突から入ろうとします。
お母さんぶた
大きくなった三匹の子ぶたに、それぞれ自分の家を建てて暮らすよう伝えます。家は毎日を過ごす大切な場所だからこそ、よく考えて作るよう助言します。
教訓
- 早く終わらせることだけを考えるのではなく、必要なところには時間や手間をかけることが大切。
- 目の前では結果が見えなくても、こつこつ続けた努力が、いざというときに自分を助けてくれることがある。
- 何かを始める前に「どうしたら安心できるか」「何が必要か」と考えて準備することが大切。
- 一人では難しいことも、家族や仲間と力を合わせることで乗り越えられることがある。
- 失敗しても、そこから学び、次に生かすことで成長することができる。
親子で話したいポイント
- 三匹の子ぶたは、それぞれどんな家を作った?
- 一番上の子ぶたは、どうしてわらを選んだのかな?
- 三番目の子ぶたは、どうして時間のかかるレンガを選んだのだろう?
- おおかみが来たとき、レンガの家が壊れなかったのはどうしてかな?
- 三匹は、どうやって力を合わせておおかみを追い返した?
- じっくり頑張ったことで「やってよかった」と思ったことはある?
- 自分なら、どんな材料で家を作ってみたい?
保育士向け活用ポイント
劇遊びや表現活動に
「ふーーっ!」とおおかみが息を吹く場面は、子どもたちが参加しやすく、繰り返しを楽しめます。三匹の子ぶたそれぞれの性格や家づくりの違いを表現することで、役になりきる楽しさも味わえます。
最後まで取り組む経験につなげる
三番目の子ぶたがレンガを一つずつ積み上げる姿から、すぐに結果が出なくても少しずつ続けることの大切さを考えられます。
失敗から学ぶ姿を伝える
一番上と二番目の子ぶたは家を壊されますが、その経験から学び、最後には新しい丈夫な家づくりに取り組みます。「失敗したら終わり」ではなく、「次はどうする?」と考えるきっかけになります。
協力する力を育む
おおかみに追われたあと、三匹がレンガの家で力を合わせる場面から、一人では難しいことを友だちと協力して乗り越える経験につなげられます。
製作・構成遊びへ発展させる
わら、木、レンガという異なる素材に注目し、紙、積み木、ブロック、自然物などを使った家づくりへ発展できます。「どんな形なら倒れにくい?」と試しながら作ることで、探究的な活動にもつながります。


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