あたま山

あ行
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あらすじ

むかしむかし、とてもけちな男がいました。

ある春の日、男は大好物のさくらんぼを食べていましたが、種を捨てるのさえもったいないと思い、つい飲み込んでしまいます。

すると翌朝、男の頭に小さな芽が生えていました。

芽はどんどん大きくなり、やがて立派な桜の木になります。

ところが、その桜を目当てに村人たちが次々と集まり始めて――。

落語としても有名な、不思議で少しおかしな昔話です。

本文

むかしむかし、ある町に大変けちな男が住んでいました。

男は何でもかんでも惜しがる性分でした。

食べ物は一粒も残しません。

薪も最後の最後まで燃やします。

履き物が破れてもすぐには捨てず、何度も何度も繕って使っていました。

村の人たちは、

「物を大切にするのは良いことだが、あそこまでいくと少し行き過ぎだな。」

と話していました。

そんなある春の日のことです。

男は市場で手に入れたさくらんぼを家で大事そうに食べていました。

赤くつやつやした立派なさくらんぼです。

男は一粒食べるたびに、

「うまいなあ。」

とうれしそうに笑いました。

ところが食べ終わる頃になると、男は困った顔をしました。

「この種を捨てるのはもったいない。」

植えれば木になるかもしれない。

けれど庭に植えるのは面倒です。

男はしばらく考えました。

そして、

「そうだ。飲み込んでしまえば無駄にならない。」

と言って、種を次々と飲み込んでしまいました。

翌朝。

男が目を覚まして顔を洗おうとすると、頭がむずむずします。

「なんだこれは。」

鏡を見ると、頭のてっぺんから小さな緑色の芽が出ていました。

男は慌てました。

「大変だ!」

けれど芽は痛くもかゆくもありません。

そのうち枯れるだろうと思って放っておきました。

ところが次の日になると、芽はさらに大きくなっていました。

三日後には枝が伸び始め、一週間後には立派な木になっていたのです。

「これは困った。」

男は帽子をかぶろうとしましたが入りません。

寝ようとしても枝が邪魔です。

家の戸をくぐるたびに枝が引っかかります。

それでも男は、

「まあ、木になるなら仕方ない。」

とあきらめました。

春が深まる頃。

頭の木にたくさんの花が咲き始めました。

淡い桃色の花が風に揺れ、とても美しい桜の木になったのです。

その噂はすぐに町中へ広まりました。

「頭の上に桜が咲いた男がいるらしい。」

「ぜひ見てみたい。」

ある日、男が外へ出ると、人々が集まってきました。

「きれいな桜だなあ。」

「まるで山の名所みたいだ。」

子どもたちは男の後ろをついて歩きました。

男は少し得意になりました。

「まあ、見たいなら見てもいいぞ。」

ところが桜が満開になると、事態はさらに大変になります。

町の人たちは男の頭の下にござを敷き、お弁当を広げ始めたのです。

「ここで花見をしよう。」

「酒も持ってきたぞ。」

男が驚いているうちに、

「乾杯!」

と宴会が始まってしまいました。

笑い声が響き、子どもたちは走り回ります。

男は怒りました。

「勝手に花見をするんじゃない!」

けれど誰も気にしません。

「まあまあ、そんなこと言わずに。」

「きれいな桜はみんなで楽しむものだよ。」

男は腹を立てました。

翌日も人が集まります。

その次の日も集まります。

男はとうとう我慢できなくなりました。

「もうたくさんだ!」

男は大声で怒鳴り散らし、人々を追い払いました。

それ以来、誰も近づかなくなりました。

男はようやく静かになったと安心しました。

ところが夏になると、今度は桜の葉が落ち始めました。

雨が降ると頭のくぼみに水がたまります。

水は少しずつ増え、小さな池のようになりました。

すると今度は子どもたちがやって来ました。

「池ができてる!」

「魚を泳がせよう!」

誰かが金魚を放しました。

別の子はザリガニを持ってきました。

やがて男の頭の池には小さな魚が泳ぐようになりました。

すると今度は大人たちがやって来ます。

「釣りができるぞ。」

「いい場所だなあ。」

またしても人が集まり始めました。

男は怒鳴りました。

「勝手に釣りをするな!」

けれど人々は笑っています。

男はますます腹を立てました。

そしてある日、

「こんな頭なんかいらない!」

と叫びながら走り回りました。

あまりに怒って暴れたものですから、男は池へ飛び込んでしまいました。

ぽちゃん。

それきり男の姿を見た者はいなかったそうです。

人々は言いました。

「美しい桜も、楽しい池も、みんなで分け合えばよかったのに。」

独り占めしようとすると、かえって苦しくなることがあります。

そして、みんなで楽しめば、喜びはもっと大きくなるものなのです。

おしまい。

登場人物

  • けちな男
    何でも惜しがる性格の男。さくらんぼの種を飲み込んだことから不思議な出来事に巻き込まれます。
  • 町の人々
    男の頭の桜や池を見て集まってくる人たち。
  • 子どもたち
    桜の木や池を純粋に楽しむ町の子どもたち。

教訓

  • 独り占めしようとすると、かえって幸せを失うことがある。
  • 喜びや楽しさは、人と分け合うことで大きくなる。
  • 行き過ぎた欲や執着は、自分自身を苦しめてしまう。

親子で話したいポイント

  • おもちゃやお菓子をお友だちと分け合ったことはある?
  • みんなで遊ぶと楽しいことってどんなことだろう?
  • 「もったいない」と「けち」はどう違うのかな?

保育士向け活用ポイント

  • 「共有」「順番」「貸し借り」など、園生活で大切なルールにつなげやすい作品です。
  • 4〜5歳児の話し合い活動の導入として活用できます。
  • 「みんなで使うものを大切にする」というテーマの活動にも発展させやすい昔話です。

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