あらすじ
産女は、出産にまつわる悲しい死を遂げた女性が、夜の道に現れるという妖怪です。
赤ん坊を抱いて現れ、旅人にその子を預ける話などが伝わっています。
母子の深い思いと、昔の人々が出産や死に抱いていた恐れが重なった、少し悲しく不気味な怪談です。
本文
むかしむかし、ある村で、一人の女性が亡くなりました。
その女性は、生きている間、赤ん坊をとても大切にしていました。
ところが女性が亡くなってから、村では不思議な噂が広がりはじめました。
夜道を歩いていると、道の先に白い着物を着た女が立っている。
しかも、その腕には赤ん坊が抱かれているというのです。
ある夜、一人の旅人が村へ向かうため、暗い道を歩いていました。
辺りはしんと静まり返り、聞こえるのは草を揺らす風の音だけです。
すると、道の先に白い影が見えました。
旅人は足を止めました。
よく見ると、それは白い着物を着た女でした。
女はうつむいたまま、腕の中に赤ん坊を抱いています。
旅人が恐る恐る近づくと、女が静かな声で言いました。
「この子を、少しだけ抱いてもらえませんか。」
旅人は戸惑いました。
けれど、女の声にはどこか悲しそうな響きがありました。
「少しだけなら……。」
そう言って、旅人は赤ん坊を受け取りました。
抱いたとき、赤ん坊は驚くほど軽く感じられました。
ところが、しばらくすると腕にずしりと重みがかかってきます。
「お、重い……。」
旅人は赤ん坊を抱き直しました。
けれど歩けば歩くほど、その重さは増していきます。
腕がしびれ、足取りまで重くなってきました。
「どうして、こんなに重くなるんだ……。」
旅人が振り返ると、そこにいたはずの女の姿はありません。
暗い道が続いているだけでした。
「ま、待ってくれ!」
呼びかけても返事はありません。
腕の中には、赤ん坊だけが残っています。
旅人は怖くなりました。
それでも赤ん坊を道に置いていくことはできません。
息を切らしながら、一歩ずつ村へ向かって歩き続けました。
すると、さっきまで果てしなく続いているように見えた夜道の先に、ぽつり、ぽつりと明かりが見えてきました。
気がつけば、旅人は村の近くまで来ていました。
旅人は胸をなでおろし、もう一度腕の中を見ました。
けれど、そこに赤ん坊の姿はありませんでした。
夜風が、静かに道を吹き抜けていきました。
おしまい。
登場人物
産女
赤ん坊を抱いて現れるとされる女性の妖怪。
旅人
夜道で産女と出会う人物。
赤ん坊
産女が旅人に預ける、物語の中心となる存在。
教訓
命を大切にする気持ちを忘れない。
大切な人への思いは、人の心に残る。
怖い物語の中にも、愛情が隠れていることがある。
親子で話したいポイント
産女は、どうして赤ん坊を旅人に預けたのかな?
赤ちゃんを守るには、何が大切かな?
家族に大切にされるって、どんな気持ちかな?
保育士向け活用ポイント
乳児保育では怖さを強めすぎず、「命」「親子のつながり」「大切にされること」を中心に活用できます。
少し年齢の高い子どもには、昔の人がどんなことを怖いと感じ、どのように怪談として語り継いできたのかを考えるきっかけにもできます。


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