読了時間:約8分
あらすじ
むかしむかし、隣同士の村に、正直で働き者のおじいさんと、少し欲張りなおじいさんが住んでいました。
正直じいさんは毎日こつこつと畑仕事をし、困っている人がいれば進んで手を貸していました。
ある日、山で不思議な出来事に出会った正直じいさんは、思いがけない贈り物を受け取ります。
その話を聞いた欲張りじいさんは、自分も同じように宝を手に入れようとしますが――。
本文
むかしむかし、山と川に囲まれた村に、正直じいさんと欲張りじいさんが住んでいました。
正直じいさんは朝早く起きて畑を耕し、野菜を育てて暮らしていました。
暮らしは豊かではありませんでしたが、おじいさんはいつも笑顔でした。
「今日も元気に働けるのはありがたいことだ。」
そう言って毎日を過ごしていました。
一方、欲張りじいさんは口ぐせのように言っていました。
「どうしてあの人ばかり幸せそうなんだ。」
「もっと楽にお金持ちになりたいものだ。」
ある秋の日のことです。
正直じいさんが山へ薪を拾いに行くと、小さな声が聞こえました。
「助けてください。」
見ると、小さな子ぎつねが罠に足を挟まれていました。
「これは大変だ。」
おじいさんは急いで罠を外してあげました。
子ぎつねは何度も頭を下げました。
「ありがとうございました。」
そう言うと、森の奥へ走っていきました。
その夜のことです。
家の戸を誰かが叩きました。
コンコン。
戸を開けると、昼間の子ぎつねと、そのお母さんぎつねが立っていました。
「今日は息子を助けてくださってありがとうございました。」
お母さんぎつねは、小さな袋を差し出しました。
「これはお礼です。」
袋の中には、不思議な種が入っていました。
「この種を植えて大切に育ててください。」
次の日、おじいさんは畑の隅にその種を植えました。
毎日水をあげ、
草を抜き、
大事に育てました。
やがて芽が出て、
葉が茂り、
大きな木になりました。
そして秋になると、木にはたくさんの実がなりました。
実を割ってみると、中にはお米や野菜の種がぎっしり入っています。
「これはありがたい。」
おじいさんは必要な分だけ使い、残りは近所の人たちに分けました。
村の人たちは大喜びです。
「ありがとう。」
「来年も畑ができるよ。」
その話を聞いた欲張りじいさんは目を輝かせました。
「そんな木があるなら、私も育てよう。」
欲張りじいさんは山へ行き、動物を探しました。
すると、木に引っかかっていた子だぬきを見つけました。
「助けてほしいか?」
欲張りじいさんは言いました。
「宝をくれるなら助けてやろう。」
子だぬきは困った顔をしました。
それでも助けてもらい、山へ帰っていきました。
その夜、たぬきの親子がやってきました。
「助けていただいたお礼です。」
渡されたのは、小さな種でした。
欲張りじいさんは大急ぎで種を植えました。
「早く育て!」
「早く宝を出せ!」
毎日何度も土を掘り返し、
水をたくさんかけすぎ、
枝を無理に引っ張りました。
けれど木は元気に育ちません。
やっと実がなったと思ったら、中に入っていたのは草の種ばかりでした。
欲張りじいさんはがっかりしました。
その時、正直じいさんが言いました。
「大切なのは、何をもらうかじゃない。」
「どんな気持ちで人に接するかなんだよ。」
欲張りじいさんはうつむきました。
「私は見返りばかり考えていた。」
それから欲張りじいさんは、少しずつ変わっていきました。
畑仕事を手伝ったり、
困っている人を助けたり、
挨拶をしたりするようになりました。
数年後。
二人のおじいさんは並んで畑仕事をしていました。
欲張りじいさんが言いました。
「不思議だな。」
「前よりお金持ちになったわけじゃないのに、毎日が楽しい。」
正直じいさんは笑いました。
「それが本当の豊かさなのかもしれないね。」
山には今日も優しい風が吹いていました。
おしまい。
登場人物
- 正直じいさん
働き者で思いやりがあり、見返りを求めない優しい人物。 - 欲張りじいさん
楽をして豊かになりたいと考えている人物。 - 子ぎつね
正直じいさんに助けられる小さなきつね。 - お母さんぎつね
恩を忘れず、お礼を届けに来るきつね。 - 子だぬき
欲張りじいさんに助けられる動物。
教訓
- 見返りを求めない優しさは人を幸せにする。
- 結果よりも行動する時の気持ちが大切。
- 本当の豊かさは、お金だけでは決まらない。
親子で話したいポイント
- 正直じいさんと欲張りじいさんの違いは何だったかな?
- 誰かを助ける時、何を大切にしたい?
- 「豊かさ」ってどんなことだと思う?
保育士向け活用ポイント
- 「内発的動機」と「見返りを求める行動」の違いを考えるきっかけになります。
- 思いやりや社会性を育てる道徳教材として活用できます。
- 子ども同士の助け合いや協力活動につなげやすい内容です。


コメント