あらすじ
むかしむかし、山の中に心優しい赤おにが住んでいました。
赤おには、人間と仲良くなりたいと思っていましたが、鬼というだけで怖がられてしまいます。
そんな赤おにのために、友だちの青おにはある作戦を考えます。
その作戦によって、赤おには念願だった人間たちと仲良くなることができました。
けれど、その幸せの裏には、赤おにを思う青おにの深い友情と、切ない別れがありました。
「本当の優しさとは何か」「相手を思いやる気持ち」「友だちを大切にする心」を考えさせてくれる日本の名作です。
本文
むかしむかし、山の中に一匹の赤おにが住んでいました。
赤おには、大きな体をしていました。
頭には角があり、遠くから見ると、とても恐ろしい姿に見えました。
けれど、本当の赤おには、とても心の優しいおにでした。
山のふもとには、人間たちの住む村がありました。
赤おには山の上から村を眺めながら、いつも思っていました。
「人間と仲良く暮らしたいな。」
「一緒に話をしたり、遊んだりしてみたいな。」
けれど、人間たちは「おに」と聞くだけで怖がります。
赤おにが山道に姿を見せると、
「おにだ!」
「逃げろ!」
人々はあわてて逃げていきました。
赤おには、何もしていません。
ただ仲良くなりたいだけなのに、誰も近づいてくれませんでした。
「僕は、人間を困らせたりしないのにな……。」
赤おには、しょんぼりしました。
そこで、ある日。
赤おには考えました。
「そうだ。僕が悪いおにではないことを、ちゃんと知らせればいいんだ。」
赤おには家の前に看板を立てました。
そこには、人間と仲良くなりたいことや、安心して遊びに来てほしいという気持ちを書きました。
「これなら、きっと分かってくれる。」
赤おには楽しみに待ちました。
ところが――。
山道を通りかかった人間たちは、看板を見てもなかなか家へ近づこうとはしません。
「おにの家だぞ。」
「近づいたら何をされるか分からない。」
人々は遠くから家を眺めるだけで、そのまま逃げていきました。
一日待っても。
二日待っても。
誰も遊びに来ません。
赤おには悲しくなりました。
「どうしたら僕の気持ちを分かってもらえるのだろう。」
家の中で一人、うつむいていました。
そんなある日、赤おにの友だちの青おにがやってきました。
「赤おにくん、どうしたんだい?」
青おにがたずねると、赤おにはこれまでのことを話しました。
「僕は人間と仲良くしたいんだ。」
「でも、みんな僕を見るだけで逃げてしまう。」
青おには黙って話を聞いていました。
そして、しばらく考えてから言いました。
「赤おにくん。」
「君が本当に優しいおにだということを、人間たちに分かってもらう方法があるよ。」
「本当?」
赤おには顔を上げました。
青おには、ある作戦を話しました。
「僕が人間の村へ行って、悪いおにのふりをするんだ。」
「村の人たちを怖がらせているところへ、君がやってくる。」
「そして、君が僕を追い払うんだ。」
「そうすれば人間たちは、君が自分たちを助けてくれた優しいおにだと分かってくれるよ。」
赤おには驚きました。
「でも、それでは青おにくんが悪いおにだと思われてしまうじゃないか。」
青おには笑いました。
「大丈夫だよ。」
「君が人間たちと仲良くなれるなら、僕はそれでいいんだ。」
赤おには迷いました。
大切な友だちを悪者にするなんて、本当はしたくありません。
けれど、人間たちと仲良くなりたいという願いも、ずっと胸の中にありました。
そして二人は、青おにが考えた作戦を実行することにしました。
ある日、青おには人間たちの村へ向かいました。
「うおーっ!」
青おには大きな声を出し、わざと恐ろしいおにのふりをしました。
村の人たちは驚きました。
「青おにだ!」
「逃げろ!」
人々が困っているところへ、赤おにが駆けつけました。
「やめるんだ、青おに!」
赤おには青おにに立ち向かいました。
青おにも、作戦どおりに赤おにと争うふりをします。
やがて青おには、
「覚えていろ!」
と言って山のほうへ逃げていきました。
村の人たちは、赤おにを見つめました。
「赤おにが助けてくれた。」
「このおには、悪いおにじゃなかったんだ。」
「優しいおにだったんだな。」
それからというもの、村の人たちは赤おにを怖がらなくなりました。
赤おにの家へ遊びに来る人も増えていきました。
一緒に話をしたり、お茶を飲んだり、楽しい時間を過ごしたりしました。
赤おには、とても幸せでした。
「やっと人間たちと仲良くなれた。」
ずっと願っていたことが、本当になったのです。
けれど――。
しばらくすると、赤おにはあることに気づきました。
「そういえば、最近、青おにくんが来ないな。」
以前なら、青おにはときどき赤おにの家へ遊びに来ていました。
けれど、あの日から一度も姿を見せません。
赤おには心配になりました。
「どうしたのだろう。」
赤おには青おにの家へ向かいました。
山道を歩き、青おにの家へたどり着きます。
「青おにくん。」
返事はありません。
「青おにくん、いるかい?」
しん……。
家の中は静まり返っていました。
赤おには戸口へ近づきました。
そこには、一枚の手紙が残されていました。
赤おには手紙を手に取りました。
それは、青おにから赤おにへ残されたものでした。
人間たちと仲良くできるようになったことを喜んでいること。
そして、自分が赤おにのそばにいれば、人間たちがまた赤おにを疑ってしまうかもしれないこと。
だから、自分は遠くへ行くこと。
そんな青おにの思いが、手紙には書かれていました。
赤おには、何度も手紙を読み返しました。
「青おにくん……。」
ぽたり。
手紙の上に、涙が落ちました。
赤おには、青おにが自分のためにどれほど大きなことをしてくれたのか、ようやく分かりました。
自分が人間たちと仲良くなるために、悪者になってくれたこと。
そして、自分の幸せを守るために、何も言わず遠くへ行ってしまったこと。
「青おにくん……。」
「僕のために、そこまでしてくれたんだね。」
赤おには声をあげて泣きました。
青おにの家には、もう誰もいません。
静かな山の中に、赤おにの泣く声だけが響いていました。
それからも赤おには、青おにのことを忘れませんでした。
どれだけ遠く離れていても。
もう会えなくても。
青おには、いつまでも赤おにの大切な友だちでした。
おしまい。
登場人物
赤おに
人間と仲良くなりたいと願う、心優しいおにです。人間たちに怖がられて悲しんでいましたが、青おにの助けによって願いをかなえます。
青おに
赤おにの大切な友だちです。赤おにの幸せを願い、自分が悪者になる作戦を考え、最後には赤おにのもとを離れていきます。
村の人々
最初は「おに」という見た目やイメージから赤おにを怖がりますが、赤おにに助けられたことで、その優しさを知っていきます。
教訓
- 本当の優しさとは、相手のことを心から思いやること。
- 友だちを大切にする気持ちは、大きな力になる。
- 見た目や先入観だけで相手を判断してはいけない。
- 誰かのために行動する心には、大きな価値がある。
親子で話したいポイント
- 赤おには、どうして人間と仲良くなりたかったのかな?
- 青おには、なぜ自分が悪者になることを選んだのかな?
- 赤おには、青おにの手紙を読んでどんな気持ちになったと思う?
- 本当の友だちとは、どんな人だと思う?
- 友だちのために何かしてあげたことはある?
保育士向け活用ポイント
劇遊びでは、赤おに・青おにそれぞれの気持ちを表現することで、感情理解や共感性を育む活動にもつなげられます。
友情や思いやり、相手の立場を考える力を育む教材として活用できます。
赤おにと青おに、それぞれの気持ちを考えることで、「自分だったらどうするだろう」と相手の立場を想像する活動につなげられます。
「おにだから怖い」と決めつける村人たちの姿から、見た目や先入観だけで相手を判断することについて考えるきっかけにもなります。
「仲間外れ」「見た目による判断」「知らない相手への不安」など、子ども同士の関係づくりにもつながるテーマを含んでいます。
インクルーシブ保育の視点では、「違うから怖い」「知らないから避ける」という気持ちに向き合い、一人ひとりを知ろうとすることの大切さを考えることができます。


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