ちいさいおうち|世界の名作・昔話

世界の名作・昔話

あらすじ

むかしむかし、静かな丘の上に、一軒の小さな家が建っていました。

家のまわりには草原が広がり、春には花が咲き、夏には太陽が輝き、秋には木々が色づき、冬には雪が積もりました。

小さな家は、そんな季節の移り変わりを感じながら、穏やかな毎日を過ごしていました。

ところが、長い年月が流れるうちに、まわりの景色は少しずつ変わっていきます。

道路ができ、車が増え、大きな建物が次々と建ち、いつしか小さな家はにぎやかな街の中に取り残されてしまいました。

昔の静かな丘を懐かしく思う小さな家。

そんなある日、小さな家を見つけた人によって、再び自然豊かな場所へと移されることになります。

「環境が人に与える影響」「安心できる場所の大切さ」「変化の中でも自分らしく生きること」を伝える世界の名作です。


本文

むかしむかし、

小さな丘の上に、

一軒の家が建っていました。

大きな家ではありません。

けれど、とても丈夫で、

どこか温かみのある、かわいらしい家でした。

家のまわりには、広い草原が広がっていました。

遠くには山が見え、

近くには木々が生えています。

春になると、

草原には色とりどりの花が咲きました。

ぽかぽかと暖かな日差しの中、

鳥たちの声が聞こえてきます。

夏になると、

空には大きな太陽が輝きました。

草は青々と茂り、

木々の葉が風に揺れました。

秋になると、

木々の葉は赤や黄色に染まります。

風が吹くたび、

ひらひらと葉っぱが舞い落ちました。

そして冬になると、

丘は真っ白な雪に包まれました。

しんしんと雪が降る夜。

小さな家は、静かな丘の上で冬を過ごしました。

夜になれば、

空には月が浮かびます。

そのまわりには、数えきれないほどの星が輝いていました。

昼になれば、

鳥の声や風の音が聞こえました。

小さな家は、丘の上から季節が巡っていく様子を眺めていました。

春。

夏。

秋。

冬。

そして、また春。

小さな家は、そんな毎日が大好きでした。

ところが――。

長い年月が流れるうちに、

丘のまわりの景色が少しずつ変わり始めました。

ある日、

遠くのほうに一本の道ができました。

それまで草原だった場所を、人や荷物が行き来するようになりました。

やがて道は広くなりました。

車も走るようになりました。

ぶうん。

ぶうん。

それまで聞こえていた鳥や風の音に混じって、車の音が聞こえるようになりました。

「ずいぶん、にぎやかになったなあ。」

小さな家は、変わっていく景色を眺めていました。

それから、また年月が流れました。

今度は、家のまわりに建物が建ち始めました。

一軒。

また一軒。

最初は遠くにあった建物が、少しずつ小さな家の近くまで増えてきました。

人も増えました。

車も増えました。

道はさらに大きくなりました。

高い建物も建つようになりました。

気がつけば、

かつて丘の上にぽつんと建っていた小さな家は、大きな街の中にありました。

朝から夜まで、

車の音が聞こえます。

たくさんの人が行き交います。

夜になっても、街の明かりが消えることはありません。

小さな家が見上げる空も、以前とは違っていました。

昔は、窓からたくさんの星を見ることができました。

けれど今は、高い建物に囲まれています。

「昔は、ここから山が見えたのになあ。」

小さな家は思いました。

「春になれば、花が咲いていた。」

「夏には、風が草原を渡ってきた。」

「秋には、葉っぱが舞っていた。」

「冬には、静かに雪が積もっていた。」

あのころの丘が懐かしくなりました。

鳥の声。

風の音。

夜空に輝く星。

季節がゆっくりと移り変わっていく毎日。

小さな家は、にぎやかな街の中で、昔の暮らしを思い出していました。

そんなある日のことです。

街の中に建つ小さな家を、一人の人が見つけました。

たくさんの大きな建物に囲まれた中で、

小さな家は静かにそこに建っていました。

その人は、じっと家を眺めました。

「この家は、とても素敵な家だ。」

長い年月を過ごしてきた小さな家。

古くなってはいましたが、

丈夫なところも、かわいらしいところも昔のままでした。

その人は考えました。

「この家には、もっと似合う場所があるんじゃないだろうか。」

そして、小さな家を別の場所へ移すことにしました。

大きな街を離れ、

車や建物の少ない場所へ。

小さな家は、ゆっくりと運ばれていきました。

やがてたどり着いたのは、

緑の広がる丘の上でした。

そこには、草原がありました。

風が吹いていました。

鳥の声が聞こえました。

春には花が咲きました。

夏には青い空が広がりました。

秋には木々が色づきました。

冬には雪が静かに積もりました。

夜になると、

空には月と星が輝きました。

小さな家は、久しぶりに静かな夜を過ごしました。

窓の向こうには、高い建物ではなく、広い空が見えます。

風が草を揺らしています。

さらさら。

遠くから鳥の声が聞こえました。

小さな家は、昔の丘で過ごした日々を思い出しました。

長い年月の間に、たくさんの景色を見てきました。

まわりの世界は、大きく変わりました。

それでも、小さな家が心地よいと感じるものは変わりませんでした。

静かな丘。

季節を知らせる風。

鳥の声。

夜空に輝く星。

小さな家は、再び丘の上で季節の移り変わりを眺めながら、穏やかな日々を過ごしました。

おしまい。


登場人物

ちいさいおうち

長い年月を過ごしながら、丘の自然や街の変化を見守る存在です。にぎやかな街の中で昔の暮らしを懐かしく思い、やがて再び自然豊かな丘へと移されます。

丘の上の人々や町

小さな家を取り巻く環境の変化を表す存在です。時代とともに道路や建物が増え、小さな家のまわりの景色を大きく変えていきます。


教訓

  • 環境は、人の気持ちや暮らしに大きな影響を与える。
  • 自分が安心して過ごせる場所があることは大切。
  • 周囲が変化しても、自分にとって大切なものを忘れないことが大切。
  • 一人ひとりに合った環境を考えることが、心地よい暮らしにつながる。

親子で話したいポイント

  • 小さな家は、どんな場所で過ごしているときがうれしそうだったかな?
  • 街が大きくなるにつれて、小さな家のまわりはどう変わった?
  • まわりの環境が変わると、気持ちはどう変わるかな?
  • 自分が「ここにいると落ち着くな」と思う場所はどこ?
  • どんな場所なら、ゆっくり安心して過ごせると思う?

保育士向け活用ポイント

  • 子どもが安心して過ごすための環境構成について考える教材として活用できます。
  • 保育では、同じ保育室でも、玩具の配置、音、光、人の多さ、活動する場所などによって、子どもの感じ方は大きく変わります。
  • にぎやかな場所を楽しめる子もいれば、静かな場所で気持ちを落ち着かせる時間が必要な子もいます。一人ひとりの感じ方に目を向けることが大切です。
  • インクルーシブ保育の視点から、「すべての子どもに同じ環境を用意すること」と「それぞれが安心して過ごせる環境を考えること」の違いについて考えるきっかけにもなります。
  • 子どもを環境に合わせるだけではなく、子どもの姿を見ながら環境そのものを調整していくことも、保育者の大切な役割です。
  • 小さな家を取り巻く景色の変化から、子どもたちと身近な町や自然の変化を探す活動にもつなげられます。

保育士向けリンク

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