見越し入道(みこしにゅうどう)|世界の名作・昔話(日本の妖怪)

怖い話・妖怪の話・怪談

あらすじ

夜道を歩く人の前に、最初は小さかった僧のような姿が現れます。

ところが、その姿を見上げるたびに、どんどん大きくなっていきます。

「見越し入道」は、見上げれば見上げるほど背が高くなるといわれる、不気味な妖怪です。

本文

むかしむかし、夜になると人通りがほとんどなくなる山道がありました。

昼間は木々の間から日の光が差し込み、鳥の声も聞こえる道でしたが、夜になると様子は一変します。

風が枝を揺らし、どこからともなく葉のこすれる音が聞こえてきます。

村人たちは、その山道を暗くなってから通ることを嫌がっていました。

ある夜、一人の男が仕事を終え、急いで家へ帰っていました。

月明かりだけを頼りに山道を歩いていると、少し先に小さな人影が見えました。

「こんな夜に、誰だろう?」

男は足をゆるめました。

人影は道の真ん中に立ったまま動きません。

近づいてみると、それは僧のような姿をしていました。

頭を丸め、長い衣をまとっています。

「なんだ、お坊さまか。」

男は少し安心しました。

ところが、その横を通り過ぎようとしたとき、妙なことに気づきました。

さっきまで自分と変わらないほどの背丈だったはずなのに、僧の頭が少し高いところにあるのです。

「……あれ?」

男は思わず顔を上げました。

すると僧の姿は、いつの間にか男よりもずっと大きくなっていました。

男は立ち止まりました。

「そんなはずは……。」

もう一度、恐る恐る見上げます。

すると今度は、さらに背が伸びています。

僧の顔は暗い木々の上へ近づき、夜空を背にしてこちらを見下ろしていました。

男の背中を冷たい汗が流れました。

「見上げてはいけない。」

そう思うのに、気になって仕方がありません。

風が強く吹き、木々がざわざわと揺れました。

男はもう一度だけ、ゆっくりと顔を上げました。

その瞬間、息をのみました。

僧の姿は、山の木々よりも高くなっていたのです。

暗闇の中から大きな顔がのぞき込み、男をじっと見下ろしています。

「見越し入道だ!」

男は叫ぶと、くるりと背を向けて走り出しました。

後ろを振り返る勇気はありません。

石につまずきそうになりながら、ただひたすら山道を駆け下りました。

風の音にまじって、何か大きなものが後ろにいるような気配がしました。

けれど男は、もう決して見上げませんでした。

やがて村の家々の明かりが見えてきます。

男は息を切らしながら村へ駆け込み、ようやく足を止めました。

恐る恐る山の方を振り返ってみましたが、そこには暗い木々が並んでいるだけでした。

おしまい。

登場人物

男
夜道で見越し入道に出会う人物。

見越し入道
見上げるほど大きくなるといわれる妖怪。

教訓

危険を感じたら、無理に近づかない。

怖いものに出会っても、できるだけ落ち着いて行動する。

夜道では安全を第一にする。

親子で話したいポイント

見越し入道を見たら、どうする?

怖いものに近づかないことは、なぜ大切?

夜道で一人になったら、どうしたらいい?

保育士向け活用ポイント

防犯や夜道の安全について考えるきっかけとして活用できます。

「見上げるたびに大きくなる妖怪」という特徴を生かし、身体を少しずつ大きく伸ばしていく表現遊びにもつなげられます。

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