千羽鶴の恩返し(せんばづるのおんがえし)

昔話
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あらすじ

むかしむかし、山あいの小さな村に、心優しい少女が住んでいました。

ある冬の日、少女は雪の中で羽を傷つけた一羽の鶴を助けます。

それからしばらくして、少女の家に一人の旅の娘が訪ねてきました。

娘は家に住みながら、美しい織物を織り始めます。

けれど、その織物には誰も知らない秘密が隠されていたのでした。


本文

むかしむかし、山に囲まれた小さな村に、おはなという少女が住んでいました。

おはなはお父さんと二人暮らしでした。

毎日畑を手伝い、

川へ水を汲みに行き、

家の仕事もよく手伝う働き者でした。

ある冬の日のことです。

山からの帰り道、おはなは雪の積もった野原で何かが動くのを見つけました。

近づいてみると、一羽の鶴が羽を傷つけて倒れていました。

鶴は苦しそうに鳴いています。

「大丈夫?」

おはなは急いで家へ連れて帰りました。

傷を洗い、

布を巻き、

温かい部屋で休ませました。

数日後。

鶴は元気を取り戻しました。

おはなは窓を開けました。

「もう飛べるね。」

鶴は何度も振り返りながら空へ飛び立っていきました。

「元気でね。」

おはなは少し寂しくなりました。

それから数週間後。

雪が降る夕方でした。

家の戸を叩く音が聞こえました。

こんこん。

戸を開けると、一人の若い娘が立っていました。

「吹雪で道に迷ってしまいました。」

「一晩泊めていただけませんか。」

お父さんは言いました。

「こんな寒い日に外へ出すわけにはいかない。」

娘は家に泊まることになりました。

翌朝になると、娘は言いました。

「お礼に、私に機織りをさせてください。」

娘は部屋にこもり、機を織り始めました。

からん。

ことん。

からん。

ことん。

やがて出来上がった布は、見たこともないほど美しいものでした。

雪のように白く、

月の光のように輝いています。

町の商人は驚きました。

「こんな織物は見たことがない。」

織物は高く売れました。

おかげで、おはなたちの暮らしは少しずつ楽になっていきました。

けれど娘には一つだけ約束がありました。

「機を織っている間は、決して部屋を開けないでください。」

おはなとお父さんは約束を守りました。

ところがある夜のことです。

部屋の中から苦しそうな声が聞こえました。

おはなは心配になりました。

「大丈夫かな。」

ついに戸を少しだけ開けてしまいました。

すると――

部屋の中にいたのは、一羽の鶴でした。

鶴は自分の羽を抜きながら織物を織っていたのです。

おはなは驚きました。

「あなたは・・・。」

鶴は静かにうなずきました。

「あの日、助けてもらった鶴です。」

「どうしても恩返しがしたかったのです。」

おはなの目には涙が浮かびました。

「そんなことをしなくてもよかったのに。」

鶴は優しく笑いました。

「優しさをもらった人は、誰かに優しさを返したくなるものなのです。」

窓の外では雪がやんでいました。

鶴は羽を広げました。

「私はもう行かなければなりません。」

おはなは言いました。

「ありがとう。」

「絶対に忘れないよ。」

鶴は大きく羽ばたき、朝焼けの空へ飛び立っていきました。

それから何年たっても、おはなは冬になると空を見上げました。

そして誰かが困っている時には、あの日の鶴のように手を差し伸べました。

優しさは巡り、

また誰かへ渡っていく。

村の人たちはそう語り継いだそうです。

おしまい。


登場人物

  • おはな
    心優しく働き者の少女。
  • お父さん
    おはなと暮らす優しい父親。

  • おはなに助けられ、恩返しに訪れる存在。
  • 商人
    美しい織物を買い取る町の商人。

教訓

  • 人にしてもらった優しさは、また誰かへ返していくことができる。
  • 思いやりは人と人をつなぐ。
  • 本当の恩返しとは、相手を思う気持ちから生まれる。

親子で話したいポイント

  • おはなはどうして鶴を助けたのかな?
  • 誰かに優しくしてもらった経験はあるかな?
  • もらった優しさを、次は誰に渡せるだろう?

保育士向け活用ポイント

  • 思いやりや感謝の気持ちを育てる教材として活用できます。
  • 「恩返し」や「助け合い」の価値を子どもたちと考えるきっかけになります。
  • 冬の季節行事や鳥をテーマにした製作活動へ発展させやすい題材です。

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