あらすじ
むかし、一人の勇敢な若者が王女と結婚しました。
二人は仲良く暮らしていましたが、ある日、王女が亡くなってしまいます。
深い悲しみの中にいた若者は、死んだ蛇が三枚の不思議な葉によって生き返るところを目にします。
若者はその葉を使い、亡くなった王女を生き返らせることに成功しました。
再び一緒に暮らせることを喜ぶ二人でしたが、その後、夫婦の気持ちは少しずつすれ違っていきます。
愛することだけではなく、互いを信じ、約束を守ることの大切さを描いた物語です。
本文
むかしむかし、ある国に一人の勇敢な若者がいました。
若者は困難なことがあっても逃げ出さず、正直でまっすぐな心を持っていました。
やがて若者は、一人の美しい王女と出会いました。
二人は心を通わせ、結婚することになりました。
王女の父である王さまも二人を祝福し、若者と王女は夫婦として暮らし始めました。
穏やかな日々が続きました。
二人で食事をしたり、庭を歩いたり、これから先のことを語り合ったり。
若者は王女を大切にし、王女も若者とともに過ごしていました。
ところが、そんな幸せな日々は突然終わりを迎えます。
王女が亡くなってしまったのです。
若者は深く悲しみました。
「もう一度だけ、話ができたなら……。」
けれど、どれほど願っても王女は目を開きません。
若者は王女と離れたくありませんでした。
そして、王女のそばを離れないことを誓いました。
静かな墓の中で、若者は王女のそばに座っていました。
辺りには物音一つありません。
冷たい空気の中、わずかな明かりだけが揺れていました。
どれほど時間がたったでしょう。
そのとき――。
かさっ。
どこかから、小さな音がしました。
若者は顔を上げました。
「……何だ?」
かさかさ……。
暗がりの中から、一匹の蛇が現れました。
若者は驚きましたが、じっとその様子を見つめました。
すると、そこにはもう一匹の蛇がいました。
その蛇は動きません。
死んでいるようでした。
生きている蛇は、動かなくなった仲間のそばを何度も行ったり来たりしています。
やがて蛇は、どこかへ姿を消しました。
「どこへ行ったんだろう……。」
若者が不思議に思っていると、しばらくして蛇が戻ってきました。
その口には、葉がくわえられていました。
一枚。
二枚。
三枚。
蛇は三枚の葉を、動かなくなった仲間の体にそっと置きました。
若者は息をひそめて見守ります。
すると――。
ぴくっ。
死んでいたはずの蛇の体が、わずかに動きました。
「えっ……?」
ぴく、ぴくっ。
蛇は頭を持ち上げました。
そして、何事もなかったかのように体をくねらせると、もう一匹の蛇と一緒に暗闇の中へ消えていきました。
若者は、しばらく声も出せませんでした。
「あの葉が……生き返らせたのか?」
若者は三枚の葉のことが頭から離れなくなりました。
もし、あの葉に本当に命を取り戻す力があるのなら――。
若者は王女を見つめました。
「もしかしたら……。」
若者は三枚の不思議な葉を手に入れると、大切に持ち帰りました。
そして王女のそばへ戻りました。
「どうか……。」
若者は願いを込めて、一枚目の葉を王女の体に置きました。
何も起こりません。
二枚目の葉を置きました。
それでも王女は動きません。
若者の手が震えました。
残る葉は、あと一枚です。
「お願いだ……。」
若者は三枚目の葉を置きました。
しん……。
静かな時間が流れます。
そのとき――。
王女の指が、ほんの少し動きました。
「……!」
若者は息をのみました。
王女の胸がゆっくりと上下し始めます。
そして――。
王女が目を開きました。
「ここは……?」
「生き返った……!」
若者は喜びました。
もう二度と話すことができないと思っていた王女が、再び自分の目の前にいるのです。
王女も自分の身に何が起きたのか分からないまま、若者の顔を見つめました。
二人は再び一緒に暮らせることになりました。
若者は心から喜びました。
失ったと思っていた大切な人が戻ってきたのです。
これからは、きっと以前のように暮らせる。
若者はそう信じていました。
けれど、一度途切れてしまった二人の時間は、以前とまったく同じではありませんでした。
少しずつ、二人の気持ちにすれ違いが生まれるようになりました。
若者は王女を大切にしようとしました。
「何か心配なことがあるのなら、話してほしい。」
けれど王女は、なかなか自分の気持ちを話そうとしません。
二人の間には、以前にはなかった距離が生まれていきました。
「どうして分かってくれないのだろう。」
若者は悲しくなりました。
けれど、自分の気持ちだけを押しつけることもできません。
王女にも、王女の気持ちがあります。
若者は何度も王女と向き合おうとしました。
一度離れてしまった心を近づけることは、三枚の葉で命を取り戻すことのようには簡単ではありません。
魔法の葉があれば、失われた命を取り戻すことはできました。
けれど、人の心には魔法の葉はありません。
若者は王女のそばで、静かにそのことを考え続けました。
そして二人の間に起きたことは、長く心に残ることになりました。
おしまい。
登場人物
若者
勇敢でまっすぐな心を持つ主人公。亡くなった妻を深く悲しみ、不思議な三枚の葉を使って王女を生き返らせます。
王女
若者と結婚する王さまの娘。一度亡くなりますが、三枚の蛇の葉によって再び命を取り戻します。
蛇
死んだ仲間を三枚の不思議な葉で生き返らせ、若者に葉の力を知らせる存在。
王さま
王女の父親。若者と王女の結婚を見守る人物。
教訓
愛情だけではなく、お互いを信頼することも大切。
約束したことには責任を持ち、相手と誠実に向き合うことが大切。
気持ちがすれ違ったときには、自分の思いだけではなく、相手の気持ちにも耳を傾けることが大切。
親子で話したいポイント
若者はどうして王女を生き返らせたいと思ったのかな?
蛇が仲間を助ける姿を見たとき、若者はどんな気持ちだったと思う?
信頼できる人とは、どんな人だと思う?
大切な人と気持ちがすれ違ったとき、どうしたらお互いの気持ちを伝えられるかな?
保育士向け活用ポイント
幼児向けに扱う場合は、「死」や夫婦のすれ違いを強調しすぎず、「大切な人を思う気持ち」「約束や信頼」「相手の気持ちを聞くこと」を中心に再話できます。
三枚の葉で蛇が生き返る不思議な場面を物語の入り口にしながら、友達との気持ちのすれ違いや、相手と話し合うことについて考える対話活動にもつなげられます。


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