くわず女房(くわずにょうぼう)

日本の昔話
この記事は約3分で読めます。

読了時間:約7分

あらすじ

むかしむかし、一人暮らしの男がいました。

男は毎日の暮らしが大変で、「ごはんを食べないお嫁さんが来てくれたらいいのになあ」と考えていました。

するとある日、本当に「私は何も食べません」という美しい女性が現れます。

男は大喜びしますが、不思議なことに家のお米はどんどん減っていきます。

やがて男は、その秘密を知ることになるのでした。

本文

むかしむかし、山あいの小さな村に、一人の男が住んでいました。

男は毎日畑を耕し、山へ薪を取りに行き、一生懸命働いていました。

けれど、一人暮らしはなかなか大変です。

ご飯を作るのも洗濯をするのも、自分一人でやらなければなりません。

ある日、男はため息をつきました。

「誰かお嫁さんが来てくれたらなあ。」

「できれば、ごはんを食べない人だと助かるんだけど。」

男は冗談まじりにそう言いました。

すると数日後、家の戸をたたく音がしました。

「こんにちは。」

戸を開けると、そこには美しい女性が立っていました。

女性は静かに言いました。

「もしよろしければ、お嫁さんにしてください。」

男はびっくりしました。

「本当に?」

女性はうなずきました。

そして言いました。

「私は食べ物をほとんど食べません。」

男は大喜びです。

「それはありがたい!」

こうして二人は一緒に暮らし始めました。

女房はとても働き者でした。

掃除も洗濯も上手です。

畑仕事も手伝ってくれました。

家はいつもきれいになり、男は幸せでした。

けれど、不思議なことがありました。

蔵にしまってあるお米が、毎日少しずつ減っていくのです。

「おかしいな。」

「二人ともあまり食べていないのに。」

男は首をかしげました。

ある日、男は町へ出かけることになりました。

「夕方には帰るよ。」

そう言って家を出ました。

けれど途中で忘れ物に気づき、家へ戻りました。

すると家の中から、何かを食べる音が聞こえてきます。

「もぐもぐ。」

「ぱくぱく。」

男は不思議に思いました。

そっと戸のすき間からのぞいてみると——

そこには、たくさんのおにぎりを食べている女房の姿がありました。

しかも女房の髪の間から、もう一つの口が現れていたのです。

男は驚いて声も出ません。

女房は男に気づき、悲しそうな顔をしました。

「見てしまったのですね。」

女房は静かに言いました。

「私は山の精霊です。」

「あなたが『食べないお嫁さんがほしい』と言った願いを聞いてやって来ました。」

男は言いました。

「どうして黙っていたんですか?」

女房は答えました。

「本当の姿を知ったら、あなたが怖がると思ったからです。」

男は少し考えました。

そして言いました。

「驚いたけれど、今まで助けてもらったことは変わらないよ。」

「たくさん働いてくれて、ありがとう。」

女房は嬉しそうに笑いました。

「ありがとうございます。」

「でも、私はそろそろ山へ帰る時が来たようです。」

次の日の朝、女房は山へ帰っていきました。

男は少し寂しくなりました。

家はまた静かになりました。

けれど男は大切なことに気づきました。

人は誰でも食べて、眠って、生きています。

それを支えるために、たくさんの人が働いています。

「食べることは悪いことじゃない。」

「生きるために大切なことなんだ。」

男は毎日の食事に感謝するようになりました。

そして、食べ物を作ってくれる人たちにも感謝して暮らしたそうです。

おしまい。

登場人物


  • 一人暮らしをしている働き者の男性。
  • 女房
    「食べないお嫁さん」として現れた不思議な存在。
  • 山の精霊
    女房の本当の姿。

教訓

  • 食べることは生きるために大切なこと。
  • 人にはそれぞれ事情や秘密がある。
  • 相手を見た目だけで判断しないことが大切。

親子で話したいポイント

  • 毎日のごはんは誰が作ってくれているかな?
  • 「いただきます」にはどんな意味があるんだろう?
  • 人の秘密や違いを知った時、どう接したらいいかな?

保育士向け活用ポイント

  • 食育活動の導入教材として活用できます。
  • 「食べることへの感謝」や「命をいただくこと」を考えるきっかけになります。
  • 年長児では「見た目や思い込みで決めつけないこと」を話し合う活動にもつなげられます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました