読了時間:約5分
あらすじ
山奥で見つけた不思議な泉の水を飲んだおじいさん。
すると白かった髪は黒くなり、曲がっていた腰はまっすぐになっていきました。
若返ったことを喜ぶおじいさんでしたが、水を飲み続けた結果、思いもよらないことが起こります。
「もっと若くなりたい。」
その気持ちは、やがておじいさんを赤ん坊の姿へと変えてしまうのでした。
本文
むかしむかし、山あいの小さな村に、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
二人は畑を耕しながら、慎ましく暮らしていました。
おじいさんは働き者でしたが、年を重ねるにつれて体が思うように動かなくなっていました。
「よいしょ、よいしょ。」
畑を耕すたびに腰が痛みます。
薪を割れば肩が痛み、山道を歩けば膝が笑いました。
ある日、おじいさんは山へ薪拾いに出かけました。
帰り道、喉が渇いたおじいさんは、見慣れない泉を見つけました。
透き通った水が岩の間から湧き出しています。
「こんなところに泉があったかな。」
おじいさんは手ですくって飲んでみました。
水はひんやりとして、とてもおいしく感じました。
「これはうまい。」
おじいさんは何杯も飲みました。
翌朝。
鏡を見たおじいさんは驚きました。
「おばあさん!見てくれ!」
白かった髪に黒い色が混じっていたのです。
しかも、いつも痛かった腰が軽くなっていました。
「まあ、不思議なこともあるものだねえ。」
おばあさんも驚きました。
次の日、おじいさんはまた泉へ向かいました。
そして水を飲みました。
翌朝になると、髪はさらに黒くなり、顔のしわも少なくなっていました。
「これは若返りの水に違いない!」
おじいさんは大喜びしました。
その日から毎日、泉へ通うようになりました。
数日後。
おじいさんは五十歳くらいの姿になっていました。
腰はまっすぐに伸び、重い荷物も軽々と持ち上げられます。
村人たちは驚きました。
「本当に若返ったぞ!」
「いったい何をしたんだ?」
おじいさんは得意そうに胸を張りました。
「山の泉の水を飲んだのさ!」
村人たちは半信半疑でしたが、おじいさんは嬉しくてたまりません。
さらに数日が過ぎました。
今度は三十歳くらいの若者の姿になりました。
山道を走っても息が切れません。
木にもすいすい登れます。
「若いというのは素晴らしい!」
おじいさんは毎日笑っていました。
しかし、おばあさんは少し心配そうでした。
「もう十分若返ったんじゃないかい?」
「何を言うんだ。もっと元気になれるかもしれないぞ。」
おじいさんは笑いました。
そして翌日も、その次の日も泉の水を飲み続けました。
すると今度は二十歳くらいの青年になりました。
その次は十歳くらいの少年になりました。
村の子どもたちと走り回り、木登りをして遊びました。
「おじいさん、速い!」
「はっはっは!」
おじいさんは大笑いしました。
ところが、その翌朝。
おばあさんが目を覚ますと、布団の中に小さな男の子が寝ていました。
「まあ!」
男の子は、おじいさんの顔をしていました。
おじいさんはとうとう五歳くらいの子どもになってしまったのです。
「これは困った。」
おばあさんは頭を抱えました。
それでもおじいさんは泉へ行こうとしました。
「まだ飲む!」
「だめだよ!」
おばあさんは止めましたが、おじいさんは聞きません。
そして隙を見て泉へ向かってしまいました。
翌朝。
今度は赤ん坊になっていました。
「おぎゃあ、おぎゃあ!」
泣き声を聞いて、おばあさんはため息をつきました。
「だから言ったのに。」
それでも、おばあさんは赤ん坊になったおじいさんを大切に育てました。
村人たちも手伝ってくれました。
おむつを替える人。
子守をする人。
おかゆを作る人。
みんなが力を貸してくれました。
赤ん坊のおじいさんは、たくさんの人に抱っこされ、たくさん笑いました。
そして少しずつ成長していきました。
ある日、おばあさんが聞きました。
「また若返りの水を飲みたいかい?」
すると少年になったおじいさんは首を横に振りました。
「もういいよ。」
「どうしてだい?」
「だって、今がちょうどいいから。」
おばあさんは笑いました。
「そうだねえ。」
おじいさんも笑いました。
若いことは素晴らしい。
けれど、年を重ねることもまた素晴らしい。
その年齢にしかできないこと、その年齢だからこそわかることがあるのです。
おじいさんはそれを身をもって知ったのでした。
それから二人は、今の毎日を大切にしながら仲良く暮らしたということです。
おしまい。
登場人物
- おじいさん
働き者ですが、年を重ねて体の衰えを感じていました。若返りの水を飲んだことで大騒動を起こします。 - おばあさん
優しくしっかり者のおばあさん。変わっていくおじいさんを温かく見守ります。 - 村人たち
困ったときには力を貸してくれる、心優しい人たちです。
教訓
- 欲張りすぎると、大切なものを見失うことがある。
- 今の自分や今の時間を大切にすることが大切。
- 年を重ねることにも価値がある。
親子で話したいポイント
- 「もっと欲しい」と思ったことはあるかな?
- 今の自分の好きなところはどこだろう?
- 大人になったらやってみたいことはあるかな?
保育士向け活用ポイント
- 「足るを知る」という考え方を子どもに伝える導入として活用できます。
- 成長や年齢について考えるきっかけづくりに向いています。
- 異年齢交流や祖父母交流行事の前の読み聞かせにもおすすめです。


コメント