千両みかん(せんりょうみかん)

昔話
この記事は約3分で読めます。

読了時間:約9分

あらすじ

むかしむかし、大きな商家に住む若旦那が、真冬にもかかわらず「みかんが食べたい」と言い出しました。

けれど、その年は雪の多い冬。

村にも町にも、みかんは一つも残っていません。

番頭さんは若旦那の願いを叶えるため、町中を探し回ります。

やがて見つけたのは、一つで千両もの値がつく、とても貴重なみかんでした。

人を思う気持ちと、願いを叶えようとする優しさが描かれたお話です。


本文

むかしむかし、ある城下町に大きな商家がありました。

その家には、若い若旦那が住んでいました。

若旦那は優しい人でしたが、体があまり丈夫ではありませんでした。

冬になると、よく寝込んでしまいます。

その年の冬は特に寒く、町には雪が降り積もっていました。

ある日、布団の中で休んでいた若旦那が、小さな声で言いました。

「みかんが食べたいなあ。」

お父さんもお母さんも驚きました。

「この季節にみかんかい?」

今のように冷蔵庫も温室栽培もない時代です。

冬の終わりには、みかんはほとんど残っていませんでした。

けれど若旦那は、なぜか急にみかんが食べたくなったのです。

番頭さんが言いました。

「私が探してまいります。」

番頭さんは町中を歩き回りました。

八百屋へ行きました。

「みかんはありませんか?」

「もうありません。」

市場へ行きました。

「どこかに残っていませんか?」

「今年の分は終わりました。」

隣町まで足を伸ばしました。

それでも見つかりません。

何日も探し続けました。

雪の降る日もありました。

冷たい風が吹く日もありました。

それでも番頭さんは諦めませんでした。

「若旦那に食べてもらいたい。」

その気持ちだけで歩き続けました。

するとある日、遠くの町の商人が言いました。

「一つだけならある。」

番頭さんは目を輝かせました。

「本当ですか!」

商人は箱を開けました。

そこには黄金色のみかんが一つだけ入っています。

「ただし値段は千両だ。」

番頭さんは驚きました。

千両といえば、大きな家が何軒も建つほどのお金です。

けれど番頭さんは迷いませんでした。

「若旦那のためです。」

番頭さんはみかんを抱えて急いで帰りました。

商家の人たちは驚きました。

「本当に見つけてきたのか!」

若旦那は嬉しそうにみかんを受け取りました。

ゆっくり皮をむきます。

部屋いっぱいに甘い香りが広がりました。

一房口に入れると、若旦那は目を丸くしました。

「おいしい。」

そして少し笑いました。

「でもね。」

若旦那は言いました。

「僕が嬉しいのは、みかんの味だけじゃない。」

「こんなに一生懸命探してくれたことが嬉しいんだ。」

部屋は静かになりました。

番頭さんは少し照れくさそうに笑いました。

「それが私の仕事ですから。」

若旦那は首を振りました。

「違うよ。」

「人を思う気持ちは、お金では買えない宝物なんだ。」

その言葉を聞いた家族も、働く人たちも、みんな温かい気持ちになりました。

春になる頃には、若旦那の体調も少しずつ良くなっていきました。

そして翌年の秋。

商家の庭には、小さなみかんの木が植えられました。

「来年も、その次の年も。」

「みんなでみかんを食べよう。」

やがて木は大きく育ち、毎年たくさんの実をつけるようになりました。

町の子どもたちにも配られるようになったそうです。

それ以来、その町では誰かを思って贈るみかんを、

「千両みかん」

と呼ぶようになったと言われています。

おしまい。


登場人物

  • 若旦那
    体が弱いけれど心優しい商家の息子。
  • 番頭さん
    若旦那の願いを叶えるため、町中を探し回る働き者。
  • 商家の主人と奥さん
    若旦那を心配する両親。
  • みかんを持つ商人
    貴重なみかんを保管していた人物。

教訓

  • 人を思う気持ちはお金より大切。
  • 誰かのために行動する優しさは人の心を温かくする。
  • 本当に価値があるものは値段では決まらない。

親子で話したいポイント

  • 番頭さんはどうしてそこまで頑張れたのかな?
  • 若旦那が一番嬉しかったことは何だったんだろう?
  • 自分のために誰かがしてくれて嬉しかったことはあるかな?

保育士向け活用ポイント

  • 思いやりや感謝の気持ちを育てる道徳教材として活用できます。
  • 「物の価値」と「気持ちの価値」の違いについて考えるきっかけになります。
  • 勤労感謝の日やありがとうを伝える活動への導入にも適しています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました