天狗のうちわ(てんぐのうちわ)

昔話
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あらすじ

むかしむかし、山のふもとの村に、いたずら好きで怠け者の若者がいました。

ある日、若者は山で一人の天狗に出会い、不思議なうちわを手に入れます。

そのうちわであおぐと、なんと鼻を自由に大きくしたり小さくしたりできるのです。

最初は面白がって使っていた若者でしたが、次第に欲が出てきます。

不思議な力を持つものを、自分のためだけに使おうとした若者は、思いもよらない結末を迎えるのでした。


本文

むかしむかし、山のふもとの小さな村に、太郎という若者が住んでいました。

太郎は元気な若者でしたが、少し困ったところがありました。

働くことが嫌いで、

「楽をして暮らせたらいいのになあ。」

といつも考えていました。

村の人たちが畑を耕している時も、

「そんなに頑張って何になるんだ。」

と言って、昼寝ばかりしています。

ある日のこと。

太郎は山へ薪を拾いに行きました。

しかし、本当は薪を集めるためではありません。

「何か面白いことでも起きないかな。」

と、遊び半分で山を歩いていたのです。

しばらく歩いていると、深い森の奥から不思議な声が聞こえてきました。

「うーん、困ったものだ。」

太郎が近づいてみると、そこには一人の天狗がいました。

赤い顔に大きな鼻。

背中には大きな羽。

太郎は驚きました。

「て、天狗だ!」

すると天狗は笑いました。

「怖がることはない。」

「少し頼みたいことがあるのだ。」

天狗は木の枝に引っかかった大きな袋を指さしました。

太郎が木に登って袋を取ってあげると、天狗は喜びました。

「礼をしよう。」

そう言って天狗が取り出したのは、一枚の赤いうちわでした。

「このうちわで人の鼻をあおぐと、鼻が大きくなる。」

「反対側であおぐと、小さく戻る。」

太郎は目を丸くしました。

「本当にそんなことができるのか?」

天狗はうなずきました。

「ただし、面白半分に人を困らせてはいけないぞ。」

「使い方を間違えれば、大変なことになる。」

太郎はうちわを受け取りました。

家へ帰る途中、太郎は試してみたくてたまりません。

村の友だちが歩いているのを見ると、

「少しだけならいいだろう。」

と思い、後ろからうちわであおぎました。

すると、

ぐんぐん!

友だちの鼻が伸びていきます。

「わあ!」

「なんだこれは!」

村中が大騒ぎになりました。

太郎は笑っていました。

最初はみんなも驚いただけでした。

けれど、太郎はだんだん面白がるようになりました。

村人の鼻を伸ばしては笑い、

元に戻してはまた伸ばします。

「やめてくれ!」

「困るよ!」

と言われても、

「冗談だよ。」

とやめませんでした。

ある日、太郎は町へ行きました。

そこには大きなお屋敷がありました。

太郎は考えました。

「この力を使えば、お金持ちになれるかもしれない。」

太郎は屋敷の主人に近づきました。

「あなたの鼻をもっと立派にしてあげましょう。」

主人は興味を持ちました。

「本当か?」

太郎がうちわであおぐと、

みるみる鼻が大きくなります。

主人は鏡を見て驚きました。

「これは珍しい!」

しかし、次の日。

主人は困ってしまいました。

鼻が大きすぎて、

ご飯を食べることも、

服を着ることも、

眠ることも大変です。

「元に戻してくれ!」

主人は太郎を探しました。

太郎は慌ててうちわを使いました。

ところが、急いでいたため反対側を間違えてしまいました。

すると――

太郎自身の鼻が、

ぐんぐん伸び始めたのです。

「大変だ!」

太郎は必死にうちわを探しました。

しかし、うちわは風に飛ばされ、山の方へ消えてしまいました。

太郎は長い鼻を抱えて村へ帰りました。

村人たちは言いました。

「人を困らせていたから、今度は自分が困ることになったんだ。」

太郎は深く反省しました。

「もう二度と、面白半分で人を困らせません。」

その後の太郎は変わりました。

畑仕事を手伝い、

困っている人を助け、

村のために一生懸命働きました。

するとある日、山の天狗が現れました。

「心を入れ替えたようだな。」

天狗はうちわを取り出しました。

太郎の鼻をあおぐと、

元の大きさに戻りました。

太郎は天狗に頭を下げました。

「ありがとうございます。」

天狗は言いました。

「不思議な力よりも大切なのは、正しい心だ。」

そう言って山の奥へ消えていきました。

それから太郎は、力や道具を自分のためだけに使わず、人を助けることの大切さを忘れずに暮らしたそうです。

おしまい。


登場人物

  • 太郎
    怠け者だったが、不思議なうちわをきっかけに心を改める若者。
  • 天狗
    不思議な力を持つうちわを太郎に渡す山の妖怪。
  • 村人たち
    太郎のいたずらに困らされるが、最後は成長を見守る人々。
  • 町の主人
    太郎の欲によって鼻を大きくされてしまう人物。

教訓

  • 力や才能は、正しく使うことが大切。
  • 自分が楽しいことでも、相手が嫌がることはしてはいけない。
  • 間違いに気づき、反省することで人は成長できる。

親子で話したいポイント

  • 太郎はどうしていたずらをしてしまったのかな?
  • 楽しいことと、相手が嫌なことの違いは何だろう?
  • もし不思議な力を持ったら、何に使いたい?

保育士向け活用ポイント

  • 「相手の気持ちを考える」「思いやり」を育てる読み聞かせに活用できます。
  • ルールや約束を守る大切さを考える教材になります。
  • 「もし魔法の道具があったら何に使う?」という想像遊びや表現活動にも発展できます。

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