米俵とねずみ(こめだわらとねずみ)

日本の昔話

あらすじ

むかしむかし、ある村の蔵には、秋に収穫されたお米が入った米俵がたくさん並んでいました。

その中でも一番大きな米俵は、自分こそが村のみんなの暮らしを支えているのだと、大きさを自慢していました。

一方、蔵の隅に住む小さなねずみは、自分の小さな体を見て、「ぼくなんて何の役にも立たない」と思っていました。

ところが、ある冬の夜、蔵に強い風が吹き込みます。

大きな米俵にはできなかったことを、小さなねずみたちが力を合わせてやり遂げます。

大きなものにも小さなものにも、それぞれにできることがあると気づいていくお話です。

本文

むかしむかし、ある村に大きな蔵がありました。

秋の収穫が終わると、村の人たちは田んぼでとれた大切なお米を米俵に詰め、次々と蔵へ運び入れました。

蔵の中には、ずっしりと重い米俵がずらりと並びました。

その中に、ひときわ大きな米俵がありました。

大きな米俵は、自分の体を誇らしそうにしながら言いました。

「見てごらん。私はこの蔵で一番大きい。」

そして、さらに得意そうに続けます。

「これだけたくさんのお米が入っているんだ。村のみんなを支えているのは私だよ。」

周りの米俵たちは、大きな米俵を見上げました。

「確かに大きいなあ。」

「たくさんのお米が入っていそうだ。」

そんな声を聞くたびに、大きな米俵はますます得意な気持ちになりました。

その頃、蔵の隅には一匹の小さなねずみが住んでいました。

ねずみは米俵たちの話を聞きながら、自分の小さな前足を見つめました。

大きな米俵と比べれば、自分の体はほんのわずかな大きさしかありません。

「いいなあ。あんなに大きかったら、きっと何でもできるんだろうな。」

ねずみは小さくため息をつきました。

「それに比べて、ぼくなんてこんなに小さい。何の役にも立たないや。」

そうして月日は過ぎ、寒い冬がやってきました。

ある夜のことです。

村の外では、強い風が吹き始めました。

びゅうううう……。

びゅうううう……。

風はだんだん強くなり、蔵の壁や屋根を揺らします。

ガタガタ。

ガタガタ。

蔵の中にいたねずみは、物音に驚いて目を覚ましました。

「ずいぶん強い風だなあ。」

すると突然、

バタン!

大きな音が響きました。

風の勢いで、蔵の戸が少し開いてしまったのです。

開いたすき間から、

びゅううううっ!

冷たい風が一気に吹き込んできました。

「寒い!」

「これは大変だ!」

米俵たちが騒ぎ始めました。

このまま戸が開いていれば、雪や雨まで蔵の中へ入ってくるかもしれません。

「誰か、あの戸を閉めてくれ!」

大きな米俵が言いました。

ところが、米俵たちは重くて動くことができません。

一番大きな米俵も、どれだけ力を入れても、その場から動くことすらできませんでした。

「私はこんなに大きいのに……。」

大きな米俵は困ってしまいました。

その時です。

蔵の隅から、小さな影が飛び出しました。

あのねずみです。

「ぼくが行ってみる!」

ねずみは冷たい風に向かって走りました。

びゅうびゅうと吹き込む風に押されながらも、小さな体で戸の近くまで進みます。

戸のそばには、戸を押さえるための木の棒がありました。

「これを動かせば、戸を閉められるかもしれない。」

ねずみは小さな前足を木の棒に当てました。

「よいしょ!」

ぐぐぐっ。

けれど、木の棒は動きません。

「もう一度!」

ねずみは体いっぱいの力を込めました。

「よいしょー!」

それでも、ほんの少ししか動きませんでした。

「やっぱり、ぼく一匹の力じゃ無理なのかな……。」

ねずみは一瞬うつむきました。

けれど、すぐに顔を上げました。

一匹でできないのなら、仲間に手伝ってもらえばいい。

「みんなー! 手伝って!」

ねずみが大きな声で呼びました。

すると、蔵のあちらこちらから、

ちょろちょろ。

ちょろちょろ。

仲間のねずみたちが集まってきました。

「どうしたの?」

「この棒を動かして、戸を閉めたいんだ。」

「よし、みんなでやろう!」

ねずみたちは木の棒の周りに集まりました。

一匹では小さなねずみです。

けれど、二匹、三匹、四匹と集まれば、その力は少しずつ大きくなっていきます。

「せーの!」

ぐぐっ。

「もう一度!」

ぐぐぐっ。

木の棒が少しずつ動き始めました。

「あと少しだ!」

押して。

押して。

みんなで力いっぱい押して――。

バタン!

とうとう戸が閉まりました。

びゅうびゅうと吹き込んでいた冷たい風が止まりました。

蔵の中に、いつもの静けさが戻ります。

「やった!」

ねずみたちは大喜びです。

大きな米俵は、その様子をじっと見ていました。

そして、小さなねずみに言いました。

「ありがとう。」

ねずみは驚いて振り返りました。

大きな米俵は、少し恥ずかしそうに続けました。

「私はずっと、大きい自分が一番役に立つと思っていた。」

「でも、私にはあの戸を閉めることができなかった。」

米俵は、小さなねずみたちを見ました。

「私にはできないことを、君たちがやってくれたんだね。」

ねずみは自分の小さな前足を見つめました。

そして、うれしそうに笑いました。

「ぼくは小さいけれど、小さいから動ける場所もある。」

「それに、一匹ではできなくても、みんなで力を合わせればできることもあるんだね。」

大きな米俵もうなずきました。

「大きいものには、大きいものにできることがある。」

「小さいものには、小さいものにできることがあるんだな。」

その夜から、大きな米俵は自分の大きさばかりを自慢しなくなりました。

ねずみも、自分が小さいことを恥ずかしいとは思わなくなりました。

やがて長い冬が終わり、暖かな春がやってきました。

蔵に大切にしまわれていたお米は、村の人たちのもとへ運ばれていきました。

炊きたてのご飯になったり、

おにぎりになったり、

おもちになったり。

たくさんの人のお腹を満たし、毎日の元気を支えました。

そして小さなねずみたちは、今日も広い蔵の中を元気に走り回っています。

大きな米俵も、小さなねずみも、それぞれにできることを大切にしながら、仲良く暮らしていったそうです。

おしまい。

登場人物

  • 大きな米俵
    蔵の中で一番大きな米俵。初めは自分の大きさを誇っていますが、ねずみたちの活躍を見て考え方が変わっていきます。
  • ねずみ
    自分の小さな体に自信を持てずにいましたが、冬の夜の出来事を通して、自分だからこそできることに気づきます。
  • ねずみたち
    仲間の呼びかけに集まり、みんなで力を合わせて蔵の戸を閉めます。
  • 村の人たち
    お米を育て、収穫した米俵を大切に蔵へしまう人々です。

教訓

  • 体の大きさや力の強さだけで、その人の価値や役割が決まるわけではない。
  • 自分だからこそできることや、自分の得意なことを大切にする。
  • 一人では難しいことでも、仲間と力を合わせることでできることがある。

親子で話したいポイント

  • ねずみにできて、大きな米俵にはできなかったことは何だったかな?
  • ねずみは最初、自分のことをどう思っていた?
  • 仲間のねずみたちは、どうやって戸を閉めたのかな?
  • 自分が得意なことや、「これならできる」と思うことはある?
  • お友だちや家族と力を合わせて、何かをやり遂げたことはあるかな?

保育士向け活用ポイント

大きな米俵と小さなねずみを比較しながら、「大きい・小さい」「力が強い・弱い」だけではない、それぞれのよさについて子どもたちと話し合うことができます。

「自分にもできることがある」という自己肯定感や、それぞれの違いを認め合うことについて考える教材として活用できます。

当番活動や行事など、子どもたちがそれぞれ役割を持って取り組む活動の導入にもつなげやすいお話です。

ねずみたちが力を合わせる場面から、「一人では難しい時には助けを求めてもいい」「友だちと協力することでできることがある」と伝えることもできます。

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