読了時間:約10分
あらすじ
むかしむかし、いたずら好きで遊ぶことばかり考えている少年がいました。
ある日、少年は天狗が身につけている「隠れみの」という不思議な道具の話を聞きます。
そのみのを着ると、誰からも姿が見えなくなるというのです。
少年は知恵を使って天狗から隠れみのを手に入れ、姿を消して好き放題に楽しみます。
しかし、見えない力を手に入れたことで、次第に心が大きくなり、思わぬ失敗をしてしまいます。
本文
むかしむかし、山のふもとの村に、太郎という少年が住んでいました。
太郎は元気いっぱいの子どもでした。
走ることも、
遊ぶことも、
友だちと笑うことも大好きです。
でも、一つだけ困ったところがありました。
それは、いたずらが大好きだったことです。
友だちの後ろからそっと近づいて驚かせたり、
大人の話を聞かずに勝手なことをしたりしていました。
「また太郎のいたずらか。」
村の人たちは困った顔をします。
ある日のこと。
太郎は山へ遊びに行きました。
木の間を歩いていると、山の奥から不思議な声が聞こえてきました。
「天狗には、姿を消す不思議なみのがあるそうだ。」
「そのみのを着れば、誰にも見つからない。」
太郎は耳を澄ませました。
「姿が見えなくなる?」
「それなら、どんなことでもできるじゃないか。」
太郎はその話が頭から離れません。
そこで、天狗をだまして隠れみのを手に入れようと考えました。
次の日。
太郎は山へ行き、大きな声で叫びました。
「大変だ!」
「天狗の隠れみのなんて、本当は役に立たないぞ!」
すると、木の上から天狗が現れました。
「なんだと?」
天狗は怒った顔をしています。
「この隠れみのは、身につければ誰からも見えなくなる宝物だ。」
太郎はすました顔で言いました。
「でも、本当に姿が消えるかどうか分からないじゃないか。」
天狗は負けず嫌いでした。
「では見せてやろう。」
天狗は隠れみのを着ました。
すると、
すうっ。
天狗の姿が消えました。
「本当だ!」
太郎は驚いたふりをしました。
天狗は得意そうに言います。
「どうだ、すごいだろう。」
太郎は言いました。
「でも、見えないなら、そのみのが本物かどうかも分からないな。」
天狗はさらに怒りました。
「なら、お前が着て確かめてみろ。」
こうして太郎は、天狗から隠れみのを借りることに成功しました。
太郎は急いで村へ戻りました。
「これで誰にも見つからないぞ。」
太郎はみのを身につけました。
すると、本当に姿が消えました。
村の人たちは太郎がいないと思っています。
太郎は大喜びしました。
まず、友だちの後ろへ行きました。
「わっ!」
友だちはびっくりします。
「誰だ!」
でも、誰もいません。
太郎は笑いました。
次に、お店へ行きました。
お菓子を見ても、
「どうせ見えないんだから、少しくらいいいだろう。」
と思いました。
しかし、その時です。
お店のおじさんが言いました。
「見えなくても、悪いことをした心は自分には見えているぞ。」
太郎はドキッとしました。
もちろん、おじさんには太郎の姿は見えていません。
でも、その言葉が心に響きました。
太郎は考えました。
「姿が見えないからって、何をしてもいいわけじゃないんだ。」
その日の夜。
太郎は隠れみのを持って山へ戻りました。
天狗に返そうと思ったのです。
ところが、途中で大きな鳥が飛んできました。
驚いた太郎は隠れみのを木に引っかけてしまいました。
「しまった!」
隠れみのは風に飛ばされ、遠くへ飛んでいってしまいました。
しばらくすると、一羽の鳥がみのをくわえて飛んでいきました。
鳥はそれを食べ物だと思い、巣へ持ち帰ったのです。
巣へ運ばれた隠れみのは、細かくちぎられてしまいました。
それを見た太郎はがっかりしました。
「せっかくの宝物だったのに。」
しかし、少し考えてみると、不思議と悲しくありませんでした。
「見えなくなる力がなくても、正しいことをすることはできる。」
そう思えたからです。
それからの太郎は変わりました。
いたずらをするときも、相手がどう思うか考えるようになりました。
困っている人がいれば手伝い、
友だちには優しく接しました。
村の人たちは言いました。
「太郎はすっかり立派になったな。」
太郎は笑いました。
「本当に大切なのは、姿を消す力じゃなくて、相手を思う心なんだね。」
それ以来、村では、
「見えないものほど大切なものがある。」
という言葉が語り継がれたそうです。
おしまい。
登場人物
- 太郎
隠れみのを手に入れることで、大切なことを学ぶ少年。 - 天狗
不思議な力を持つ隠れみのを持つ山の妖怪。 - 村人たち
太郎の成長を見守る人々。
教訓
- 見えないところでも、正しい行動をすることが大切。
- 力や道具は、使う人の心によって価値が変わる。
- 相手の気持ちを考えることが思いやりにつながる。
親子で話したいポイント
- もし姿が見えなくなる道具があったら、何に使いたい?
- 太郎は最初、どんな気持ちだったかな?
- 誰も見ていない時でも大切にしたいことは何?
保育士向け活用ポイント
- 道徳性や社会性を育む読み聞かせに適しています。
- 「誰も見ていない時の行動」について考えるきっかけになります。
- ごっこ遊びや劇遊びにも発展させやすく、子どもたちの想像力を広げる題材になります。


コメント