王様の耳はロバの耳|世界の名作・昔話(ギリシャ民話)

世界の名作・昔話

読む時間の目安:約8分

あらすじ

むかしむかし、ある国に一人の王様がいました。

王様には、誰にも知られたくない秘密がありました。

それは、耳がロバのように長かったことです。

王様はいつも耳を隠していましたが、髪を切る床屋さんにその秘密を知られてしまいます。

「誰にも話してはいけない」と言われた床屋さんは、秘密を抱えきれなくなり、ある方法でこっそり打ち明けることにしました。


本文

むかしむかし、ある国に一人の王様がいました。

王様は立派な服を着て、大きなお城に住んでいました。

けれど、王様には誰にも知られたくない秘密がありました。

それは――

王様の耳が、ロバのように長かったことです。

王様は自分の耳をとても気にしていました。

「この耳を見られたくない。」

そこで髪を長く伸ばしたり、大きな帽子をかぶったりして、耳を隠して暮らしていました。

ある日、王様は床屋さんを呼びました。

「私の髪を切りなさい。」

「かしこまりました。」

床屋さんが王様の髪を切っていると、隠れていた耳が見えました。

床屋さんはびっくり。

「これは……!」

王様の耳は、ロバのように長かったのです。

すると王様は言いました。

「このことは、決して誰にも話してはいけない。」

床屋さんは約束しました。

「はい。誰にも話しません。」

床屋さんは家へ帰りました。

けれど、王様の秘密が頭から離れません。

誰かに話したくても、話すことはできません。

「言いたい……。」

「でも、言ってはいけない……。」

床屋さんは毎日、王様の秘密を抱えて過ごしました。

とうとう我慢できなくなった床屋さんは、誰もいない場所へ向かいました。

そして地面に穴を掘りました。

床屋さんは穴の中に顔を近づけ、小さな声で言いました。

「王様の耳は……ロバの耳。」

もう一度。

「王様の耳は……ロバの耳。」

床屋さんは穴を埋め、家へ帰っていきました。

これでもう、誰にも秘密を話してはいません。

ところが、しばらくすると不思議なことが起こりました。

床屋さんが穴を掘った場所から、一本の植物が生えてきたのです。

やがて大きく育ち、風が吹きました。

ざわざわ。

ざわざわ。

すると、どこからともなく声が聞こえてきました。

「王様の耳はロバの耳。」

「王様の耳はロバの耳。」

近くを通った人が立ち止まりました。

「ん? 今、何か聞こえなかったか?」

また風が吹きます。

ざわざわ、ざわざわ。

「王様の耳はロバの耳。」

その不思議な声は、たくさんの人に聞かれてしまいました。

「王様の耳はロバの耳なんだって!」

「本当なのか?」

噂はどんどん広がっていきます。

そして、とうとう王様のところまで届きました。

「私の秘密が知られてしまった!」

王様は驚きました。

もう耳を隠していても仕方がありません。

王様は帽子を取り、自分の耳をみんなの前に見せました。

けれど、人々は王様が思っていたほど驚きませんでした。

しばらくすると、王様の長い耳を気にする人もいなくなりました。

王様も、もう耳を隠すことはありませんでした。

こうして「王様の耳はロバの耳」という話は、国中に知られることになったのでした。

おしまい。


登場人物

王様

ある国を治めている王様。

ロバのように長い耳を誰にも見られないよう、ずっと隠して暮らしています。

床屋さん

王様の髪を切ったことで、長い耳の秘密を知ってしまいます。

誰にも話さないと約束しますが、秘密を抱えきれなくなってしまいます。

国の人々

不思議な声をきっかけに、王様の秘密を知ることになります。


親子で話したいポイント

  • 王様はどうして耳を隠していたのかな?
  • 床屋さんはどうして秘密を話したくなったのかな?
  • 風の中から声が聞こえてきたら、どんな気持ちになる?
  • 自分が王様だったらどうする?

保育士向け活用ポイント

「誰にも言っちゃいけない。でも言いたい」という床屋さんの様子は、子どもたちにも分かりやすく、やり取りを楽しめる場面です。

「王様の耳はロバの耳!」という言葉を繰り返したり、風に揺れる植物を体で表現したりと、劇遊びにもつなげられます。

王様の長い耳や不思議な植物を自由に描くなど、製作やお絵描きにも広げやすいお話です。

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