金の鳥|世界の名作・昔話(グリム童話)

グリム童話

あらすじ

むかし、ある王さまの庭に、黄金のりんごが実る不思議な木がありました。

ところがある日から、夜になるたびに黄金のりんごが一つずつなくなってしまいます。

王さまは三人の息子に、夜通し木を見張るよう命じました。

上の二人の王子は眠ってしまいますが、末の王子だけは眠らずに見張り続けます。

すると真夜中、闇の中から現れたのは、羽まで金色に輝く美しい鳥でした。

末の王子は金の鳥を追って旅に出ます。

そして旅の途中で出会った不思議な狐の助けを借りながら、金の鳥、金色の馬、美しい王女をめぐる長い冒険へと進んでいきます。

本文

むかしむかし、ある国に一人の王さまがいました。

王さまの城には、とても広く美しい庭がありました。

色とりどりの花が咲き、立派な木々が並んでいます。

その中に、一本だけ特別な木がありました。

その木に実るのは、普通のりんごではありません。

きらきらと輝く、黄金のりんごでした。

朝の光を受けると、黄金のりんごはまるで小さな太陽のように輝きます。

王さまは、その木をとても大切にしていました。

ところが、ある朝のことです。

庭を見回っていた者が、不思議なことに気づきました。

「王さま、大変です!」

「どうした?」

「黄金のりんごが一つ、なくなっています。」

王さまは驚きました。

前の日には確かにあったはずです。

けれど、木を調べても、りんごはどこにもありません。

「誰かが夜のうちに盗んだのではないか?」

そこで、その夜から庭を注意して見張ることになりました。

ところが――。

次の朝。

また一つ、黄金のりんごがなくなっていました。

その次の朝も。

さらに、その次の朝も。

毎晩、一つずつ。

黄金のりんごが消えていくのです。

王さまは困り果てました。

「いったい誰が、私の庭から黄金のりんごを盗んでいるのだ。」

そこで王さまは、三人の息子を呼びました。

「今夜から、お前たちにあの木を見張ってもらいたい。」

三人の王子はうなずきました。

まず、一番上の王子が見張ることになりました。

夜になりました。

辺りは静まり返っています。

しん……。

風が吹くたび、木の葉がかすかに揺れました。

さらさら……。

王子は黄金のりんごの木のそばに座り、じっと辺りを見回していました。

けれど夜が深くなるにつれ、だんだんまぶたが重くなってきました。

「少しくらいなら……。」

王子は目を閉じました。

そして、そのまま眠ってしまいました。

翌朝。

黄金のりんごは、また一つなくなっていました。

次の夜は、二番目の王子が見張りました。

「兄さんは眠ってしまったけれど、僕なら大丈夫だ。」

そう言っていた王子でしたが――。

夜が更けると、やはり眠くなってしまいました。

しんと静まり返った庭。

規則正しく聞こえる虫の声。

さらさらと揺れる木の葉。

やがて二番目の王子も眠ってしまいました。

そして朝になると、また黄金のりんごが一つ消えていました。

とうとう、末の王子の番になりました。

「今夜は僕が見張ります。」

二人の兄は言いました。

「どうせお前も眠ってしまうさ。」

けれど末の王子は、何も言い返しませんでした。

夜になると、黄金のりんごの木のそばに座りました。

月が庭を青白く照らしています。

王子は眠らないように、じっと木を見つめ続けました。

夜が深くなりました。

しん……。

城の中からも、もう人の声は聞こえません。

時折、冷たい風が庭を通り抜けます。

ざわっ……。

王子は眠くなっても目を閉じませんでした。

「今夜こそ、何が起きているのか確かめるんだ。」

やがて真夜中になりました。

そのとき――。

ばさっ。

王子は顔を上げました。

何かの羽音が聞こえたのです。

ばさっ。

ばさっ。

音はだんだん近づいてきます。

王子が夜空を見上げると、月明かりの中から一羽の鳥が飛んできました。

「なんだ、あの鳥は……!」

王子は思わず息をのみました。

鳥の羽は、頭から尾の先まで金色に輝いていました。

羽ばたくたびに、きらきらと光がこぼれるようです。

金の鳥は黄金のりんごの木へ舞い降りました。

そして――。

ぱくっ。

黄金のりんごを一つくわえました。

「お前だったのか!」

王子が立ち上がると、金の鳥は大きく羽を広げました。

ばさっ!

そして、夜空へ飛び立ってしまいました。

「待て!」

王子は追いかけました。

けれど、空を飛ぶ鳥に追いつけるはずもありません。

金の鳥は月明かりの中を飛び、やがて見えなくなってしまいました。

翌朝。

末の王子は王さまに、夜に起きたことを話しました。

「黄金のりんごを取っていたのは、金色に輝く鳥でした。」

「金の鳥だと?」

王さまは驚きました。

末の王子はうなずきました。

「あれほど美しい鳥を、僕は見たことがありません。」

王さまは、その金の鳥を見てみたいと思いました。

そこで末の王子は、金の鳥を探す旅へ出ることになりました。

城を離れ、王子は一人で歩き始めました。

どこに金の鳥がいるのかは分かりません。

それでも、鳥が飛び去った方向を頼りに進んでいきました。

森を越え。

野原を渡り。

知らない道を歩き続けます。

ある日のこと。

王子が森の中を歩いていると、一匹の狐が現れました。

「狐……?」

王子は立ち止まりました。

すると驚いたことに、狐が人の言葉で話し始めました。

「王子さま。あなたは金の鳥を探しているのでしょう。」

王子は目を丸くしました。

「どうしてそれを知っているんだ?」

狐は静かに答えました。

「私は、あなたがこれから進む道を知っています。」

「本当に?」

「ええ。私の言うことを聞けば、金の鳥を見つける手助けをしてあげましょう。」

王子は少し考えました。

目の前にいるのは、突然現れた不思議な狐です。

けれど王子には、ほかに金の鳥を探す手がかりがありません。

「分かった。君の言うことを聞くよ。」

狐はうなずきました。

「それなら、ついてきなさい。」

こうして王子は、狐の助けを借りながら旅を続けることになりました。

狐は、王子が迷いそうになるたびに道を教えました。

「こちらへ進みなさい。」

「分かった。」

「目の前に立派なものがあっても、見た目だけで選んではいけません。」

「覚えておくよ。」

王子は狐の言葉を聞きながら進んでいきました。

やがて旅の先で、王子は探していた金の鳥へ近づいていきました。

けれど、金の鳥を手に入れることは簡単ではありません。

目の前には、もっと立派に見えるものや、思わず手を伸ばしたくなるものがありました。

王子の心が揺れるたび、狐の言葉を思い出します。

「見た目だけで選んではいけない。」

旅は、そこで終わりませんでした。

金の鳥を追いかけていくうちに、王子はさらに不思議なものと出会いました。

光を受けて輝く、金色の馬。

そして、これまで会ったこともないほど美しい王女。

「金の鳥を探していただけなのに、ずいぶん遠くまで来たな……。」

王子は驚きました。

一つの出来事が、次の出来事へ。

一つの出会いが、また新しい出会いへ。

王子の旅はどんどん続いていきました。

ときには、狐から言われたことより、自分の考えのほうが正しいように思えることもありました。

目の前に立派なものがあれば、欲しくなってしまうこともあります。

「少しくらいなら、狐の言ったことと違っても大丈夫なのではないか。」

そんな気持ちになることもありました。

けれど王子は、そのたびにこれまでの旅を思い返しました。

狐の言葉を聞いたからこそ、ここまで来ることができたのです。

「約束したんだ。最後まで信じよう。」

王子は焦らず、一つずつ進んでいきました。

狐もまた、王子が困るたびに助けてくれました。

「次はこちらです。」

「ありがとう。」

「まだ安心してはいけませんよ。」

「分かった。」

こうして王子は、長い旅の中でいくつもの困難を乗り越えていきました。

そしてついに――。

王子は金の鳥を手に入れることができました。

さらに旅の中で出会った金色の馬や、美しい王女とともに、故郷へ帰ることになりました。

長かった旅も、ようやく終わりです。

遠くに、自分の国の城が見えてきました。

「帰ってきた……。」

王子は懐かしい景色を見つめました。

城へ戻った王子を見て、人々は驚きました。

金色に輝く鳥。

美しい金色の馬。

そして王女。

旅に出たときには想像もしていなかったものを、王子は連れて帰ってきたのです。

王さまも驚きました。

「よく戻ってきた。」

王子はうれしそうに笑いました。

けれど、王子は自分一人の力ですべてを成し遂げたとは思っていませんでした。

旅の途中で出会った、あの狐。

狐が道を教えてくれなければ、金の鳥へたどり着くことさえできなかったでしょう。

王子は城から遠くの森を眺めました。

木々の間を、風が静かに吹き抜けています。

ざわざわ……。

どこかで、赤い狐の尾が一瞬だけ見えたような気がしました。

王子が目をこらしたときには、もうそこには何もいませんでした。

おしまい。

登場人物

末の王子
黄金のりんごを盗んでいた金の鳥を見つけ、そのあとを追って旅へ出る主人公。狐の助言を聞きながら、さまざまな困難を乗り越えていきます。

二人の兄
末の王子の兄たち。黄金のりんごの木を見張りますが、夜になると眠ってしまいます。

狐
王子が旅の途中で出会う不思議な狐。金の鳥を探す王子に道を教え、さまざまな助言を与えます。

金の鳥
毎晩、王さまの庭へやってきて黄金のりんごを一つずつ持ち去る、美しく不思議な鳥。王子の長い旅が始まるきっかけとなります。

教訓

自分一人で判断するだけではなく、信頼できる相手の助言に耳を傾けることが大切。

一度した約束を守ることは、相手との信頼につながる。

目の前の魅力に惑わされず、焦らず一つずつ進むことが大切。

親子で話したいポイント

末の王子は、どうして狐の言葉を信じようと思ったのかな?

誰かのアドバイスを聞いて、うまくいったことはある?

約束を守ることは、どうして大切なのだろう?

金の鳥を探す旅に出るなら、誰と一緒に行きたい?

金の鳥、金色の馬、美しい王女の中で、実際に見てみたいのはどれ?

保育士向け活用ポイント

金の鳥を探してさまざまな場所を巡る物語なので、宝探しや冒険ごっこの導入として活用しやすい作品です。

園庭や保育室に羽やカードなどを隠し、「金の鳥を探そう」と手がかりをたどる遊びに発展させることで、物語の世界を楽しみながら探索活動につなげられます。

また、狐の助言を聞きながら進む王子の姿から、「友達の話を最後まで聞く」「困ったときには誰かに相談する」「約束したことを守る」といった園生活での具体的な行動について話し合う題材としても活用できます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました