三人の糸つむぎ女|世界の名作・昔話(グリム童話)

グリム童話

あらすじ

むかし、糸紡ぎが苦手な一人の娘がいました。

母親は娘にもっと糸を紡いでほしいと思っていましたが、娘はなかなかうまくできず、困っていました。

そんな娘の前に、ある日、三人の不思議な女性が現れます。

三人は長いあいだ糸を紡ぎ続けてきたため、それぞれ大きな足、大きな唇、大きな親指という特徴的な姿をしていました。

娘を助けるため、三人の女性は見事な手つきで次々と糸を紡いでいきます。

三人との出会いを通して、娘が働くことや人に助けてもらうことについて考える物語です。

本文

むかしむかし、あるところに、一人の娘が母親と暮らしていました。

娘には、どうしても苦手なことがありました。

それは、糸を紡ぐことです。

母親は毎日のように娘に言いました。

「さあ、今日も糸を紡ぎなさい。」

けれど娘は、糸紡ぎが得意ではありません。

糸車の前に座っても、なかなか思うように手が動きませんでした。

くるくる……。

糸車を回してみても、糸が途中で切れてしまいます。

「あっ、また切れた……。」

もう一度やり直します。

くるくる……。

今度は糸の太さがばらばらになってしまいました。

娘は困った顔で、自分の手元を見つめました。

「どうして、うまくできないんだろう。」

けれど母親は、娘にもっと仕事をしてほしいと思っています。

「練習しなければ、いつまでたってもできるようになりませんよ。」

娘も頑張ろうとはしました。

それでも、うまくいきません。

ある日のこと。

娘はたくさんの糸を紡がなければならなくなりました。

目の前には、まだ手をつけていない仕事が山のように残っています。

娘は糸車の前に座ったまま、ため息をつきました。

「こんなにたくさん……。私一人では、とてもできないわ。」

部屋には、糸車だけがぽつんと置かれています。

窓の外では風が吹き、木の葉がさらさらと揺れていました。

娘は途方に暮れていました。

そのときです。

とん、とん、とん。

扉をたたく音がしました。

「誰だろう?」

娘が扉を開けると、そこには三人の見知らぬ女性が立っていました。

娘は驚きました。

三人は、どこか不思議な姿をしていたのです。

一人目の女性は、とても大きな足をしていました。

二人目の女性は、大きな唇をしています。

そして三人目の女性は、驚くほど大きな親指をしていました。

娘は思わず三人を見つめました。

すると、一人の女性がにっこり笑いました。

「そんなに困った顔をして、どうしたの?」

娘は正直に答えました。

「糸を紡がなくてはいけないのです。でも、私は糸紡ぎが苦手で……。こんなにたくさん、一人ではとても終わりません。」

三人の女性は顔を見合わせました。

そして言いました。

「それなら、私たちが手伝ってあげましょう。」

「本当ですか?」

娘の顔がぱっと明るくなりました。

三人は部屋へ入ると、さっそく糸車の前に座りました。

すると――。

くるくる、くるくる。

娘が驚くほどの速さで、糸車が回り始めました。

一人が糸を整えます。

もう一人が手際よく紡ぎます。

そしてもう一人も、大きな親指を器用に動かしながら仕事を進めていきます。

くるくる。

くるくる。

三人の手は、ほとんど止まりません。

娘が苦労していた糸が、みるみるうちに美しく紡がれていきました。

「すごい……。」

娘は目を丸くしました。

「どうして、そんなに上手にできるのですか?」

三人は顔を見合わせて笑いました。

「私たちは、ずっと糸を紡いできたからね。」

娘は、改めて三人の姿を見ました。

そして気になっていたことを尋ねました。

「どうして、そんなに大きな足をしているのですか?」

一人目の女性が答えました。

「長いあいだ、糸を紡ぐ仕事をしてきたからですよ。」

娘は二人目の女性を見ました。

「では、その唇は?」

「これも、ずっと糸を紡いできたから。」

そして娘は、三人目の女性の大きな親指を見ました。

「その親指も……?」

女性はうなずきました。

「そう。長いあいだ糸を紡ぎ続けてきたからですよ。」

娘は三人の姿をじっと見つめました。

三人は、それほど長いあいだ糸を紡ぎ続けてきたのです。

それでも三人は嫌な顔一つせず、娘のために手を動かし続けました。

くるくる、くるくる。

部屋には糸車の音が響きます。

しばらくすると、あれほどたくさんあった仕事が、すっかり片づいていました。

美しく紡がれた糸が、きれいに並んでいます。

娘は信じられないような気持ちで眺めました。

「こんなにたくさん……。」

「これでもう大丈夫でしょう。」

三人の女性は立ち上がりました。

娘は深く頭を下げました。

「本当にありがとうございました。私一人だったら、きっとできませんでした。」

三人は笑いました。

「誰にだって、得意なことと苦手なことがありますよ。」

娘はその言葉を聞きながら、三人の手や足をもう一度見ました。

自分には難しかった仕事を、三人はあっという間にやってくれました。

それは、三人が長いあいだ積み重ねてきた仕事の証でもありました。

「困ったときに助けてもらうことも、悪いことではないのね。」

娘がそう言うと、三人はうなずきました。

やがて三人の女性は、娘の家をあとにしました。

とん、とん、とん。

三人の足音が少しずつ遠ざかっていきます。

娘は扉の前に立ち、その姿が見えなくなるまで見送っていました。

そして部屋へ戻ると、きれいに並んだ糸を見つめました。

静かになった部屋には、もう糸車の音は聞こえません。

けれど娘の耳には、三人が糸を紡いでいたときの音が、いつまでも残っているように感じられました。

くるくる、くるくる――。

おしまい。

登場人物

娘
糸紡ぎが苦手で、たくさんの仕事を前に困ってしまう少女。三人の不思議な女性に助けられます。

母親
娘に糸を紡ぎ、もっと仕事をしてほしいと考えている人物。

三人の糸つむぎ女
困っている娘の前に現れる不思議な女性たち。長いあいだ糸を紡いできたため、それぞれ大きな足、大きな唇、大きな親指という特徴を持っています。

教訓

困ったときには、一人ですべてを抱え込まず、誰かに助けを求めてもよい。

誰にでも得意なことと苦手なことがあり、自分に合った方法を考えることが大切。

誰かがしてくれた努力や助けを当たり前だと思わず、感謝することが大切。

親子で話したいポイント

娘はどうして三人の女性に助けてもらうことにしたのかな?

自分一人では難しいことがあったとき、誰に相談したい?

三人の糸つむぎ女は、どうしてあんなに糸紡ぎが上手だったのかな?

自分が得意なこと、苦手なことにはどんなものがある?

保育士向け活用ポイント

「困ったときに助けを求めることは悪いことではない」というテーマについて考える物語として活用できます。

子どもが苦手な活動に出会ったとき、「全部一人でできなければいけない」と考えるのではなく、保育士や友達に相談したり、自分に合った方法を探したりすることの大切さを伝えるきっかけにもなります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました