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あらすじ
むかしむかし、山あいの小さな村に、薪を売って暮らす心優しいおじいさんとおばあさんが住んでいました。
ある冬の日、おじいさんは猟師のわなにかかって苦しんでいる一匹のたぬきを見つけます。
かわいそうに思ったおじいさんは、たぬきを逃がしてあげました。
それからしばらくして、不思議な出来事が次々と起こります。
見えないところで誰かが助けてくれているような毎日。その正体は、おじいさんが助けたあのたぬきだったのです。
本文
むかしむかし、山に囲まれた小さな村に、おじいさんとおばあさんが仲良く暮らしていました。
二人はお金持ちではありませんでしたが、毎日笑顔を忘れずに暮らしていました。
朝になると、おじいさんは山へ薪を取りに行きます。
おばあさんは家で畑の世話をしたり、機織りをしたりしていました。
ある寒い冬の日のことです。
おじいさんが山道を歩いていると、
「キューン……。」
という小さな鳴き声が聞こえてきました。
声のする方へ行くと、一匹のたぬきが猟師のわなに足を挟まれて苦しんでいました。
「これは痛かっただろう。」
おじいさんは急いでわなを外しました。
たぬきはしばらくおじいさんを見つめると、小さく頭を下げるようなしぐさをして山の中へ走っていきました。
「元気で暮らすんだぞ。」
おじいさんはそう言って家へ帰りました。
数日後の朝。
おばあさんが庭へ出ると、不思議なことに薪がきれいに積まれていました。
「おじいさん、昨日運んだの?」
「いや、わしじゃない。」
二人は首をかしげました。
次の日は畑の草がきれいに抜かれていました。
またある日は、井戸の水がいっぱいにくまれていました。
「いったい誰が……。」
二人は不思議でたまりません。
ある晩、おじいさんはそっと庭に隠れて様子を見ることにしました。
月が高く昇ったころ、
草むらから一匹のたぬきが現れました。
たぬきは薪を運び、
畑を整え、
水をくみ、
家の周りをきれいに掃除していきます。
「やっぱり、お前だったのか。」
おじいさんが声をかけると、たぬきは驚いて立ち止まりました。
「ごめんなさい。」
「勝手に入ってしまいました。」
おじいさんは笑いました。
「謝ることはない。」
「わしらを助けてくれていたんだな。」
たぬきは少し照れながら言いました。
「あの日、命を助けてもらいました。」
「何かお返しがしたかったんです。」
その日から、たぬきは時々家へ遊びに来るようになりました。
おばあさんはお団子を作ってあげました。
たぬきは嬉しそうに食べます。
「こんなにおいしいものは初めてです。」
春になると、たぬきは山で見つけた山菜を届けてくれました。
夏には甘い木いちご。
秋には栗やきのこ。
冬には薪集めを手伝いました。
やがて村の人たちも、そのたぬきを見かけるようになりました。
けれど誰も追い払いません。
「あのたぬきは悪さをしない。」
「おじいさんの友だちなんだ。」
そう言って温かく見守りました。
ある年の大雨の日。
山から大量の水が流れてきました。
たぬきは急いで家へ駆け込みます。
「危ない!」
おじいさんたちは急いで高台へ避難しました。
その直後、大きな木が家の前へ倒れてきました。
もし家の中にいたら、大けがをしていたでしょう。
「知らせてくれてありがとう。」
おじいさんは涙ぐみました。
たぬきは照れくさそうに笑いました。
「今度は私が助ける番でした。」
それから何年たっても、おじいさんとおばあさん、そしてたぬきは仲良く暮らしました。
村の子どもたちは山でたぬきを見かけると、
「こんにちは!」
と声をかけます。
するとたぬきは、しっぽをふわりと揺らして走り去っていくのでした。
村では今でも、
「優しさは、めぐりめぐって自分のもとへ帰ってくる。」
そんな言葉が語り継がれているそうです。
おしまい。
登場人物
- おじいさん
心優しく、わなにかかったたぬきを助ける主人公。 - おばあさん
穏やかで思いやりのある妻。 - たぬき
命を助けてもらった恩返しをする心優しい動物。 - 村の人たち
おじいさんとたぬきを温かく見守る人々。
教訓
- 人にした優しさは、いつか別の形で返ってくる。
- 見返りを求めない親切が本当の思いやり。
- 助け合うことで、人も動物も幸せに暮らせる。
親子で話したいポイント
- おじいさんはどうしてたぬきを助けたのかな?
- たぬきはどんな気持ちで恩返しをしていたんだろう?
- 自分が「ありがとう」を伝えたい人は誰かな?
保育士向け活用ポイント
- 思いやりや感謝の気持ちを育む読み聞かせに適しています。
- 「助けてもらったら感謝を伝える」という社会性を学ぶきっかけになります。
- 秋の自然や動物をテーマにした活動や、道徳的な話し合いへ発展させやすい作品です。


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