青い鳥の恩返し

日本の昔話

あらすじ

冬のある日、山で傷ついた青い鳥を見つけたおじいさん。
おじいさんとおばあさんは鳥を家に連れて帰り、優しく看病しました。

春になり、元気を取り戻した青い鳥は空へ帰っていきます。

それからしばらくすると、おじいさんとおばあさんの畑は豊作になり、庭には美しい青い花が咲き始めました。

やがて二人の家には人々が集まり、笑い声の絶えない日々が訪れます。

傷ついた一羽の鳥を助けたことから始まる、優しさと感謝を描いた昔話です。

本文

むかしむかし、山に囲まれた小さな村に、仲の良いおじいさんとおばあさんが住んでいました。

二人は決して裕福ではありませんでしたが、小さな畑を耕し、季節の野菜を育てながら、穏やかに暮らしていました。

ある年の冬のことです。

朝から雪がしんしんと降り続き、山も畑も真っ白に染まっていました。

「今日はずいぶん寒くなるなあ」

おじいさんはそう言いながら、薪を拾うために山へ向かいました。

山の中は静まり返っていました。

聞こえてくるのは、雪を踏むおじいさんの足音だけです。

しばらく歩いていると、どこからか小さな鳴き声が聞こえてきました。

「ピィ……」

おじいさんは立ち止まり、辺りを見回しました。

「おや? どこから聞こえたんだろう」

もう一度、耳を澄ませます。

「ピィ……」

声は足元から聞こえていました。

見ると、雪の上に一羽の青い鳥が倒れています。

美しい青色の羽には傷があり、寒さのせいか小さな体を震わせていました。

「おやおや。こんなところにいたら凍えてしまう」

おじいさんはしゃがみ込み、青い鳥をそっと両手で包みました。

鳥は弱々しく目を開け、おじいさんの顔を見つめました。

「大丈夫だ。安心しなさい。家へ帰ろう」

おじいさんは青い鳥を懐に入れ、冷たい風から守るようにしながら、急いで家へ戻りました。

「ばあさん、ばあさん」

戸を開けたおじいさんの声に、おばあさんが出てきました。

「どうしたんです?」

「山でこの子を見つけたんだ」

懐から青い鳥を出すと、おばあさんは驚きました。

「まあ……かわいそうに。ずいぶん冷えているじゃありませんか」

おばあさんはすぐに囲炉裏の火を整え、温かい布を用意しました。

二人は青い鳥の羽についた雪を優しく拭き取り、傷には薬草を塗ってやりました。

その夜、おばあさんは柔らかいおかゆを少しだけ作り、小さな器に入れて鳥の前へ置きました。

青い鳥はしばらくじっとしていましたが、やがて顔を上げると、ほんの少しずつ食べ始めました。

「おじいさん、食べていますよ」

「そうか、そうか。それならきっと元気になる」

二人は顔を見合わせて笑いました。

それから毎日、おじいさんとおばあさんは青い鳥の世話を続けました。

朝になると、おじいさんは鳥かごを日の当たる場所へ運びました。

おばあさんは水を替え、新しい餌を用意しました。

寒い夜には、鳥かごのそばに布をかけ、冷たい風が入らないようにしてやりました。

そんな日々を過ごすうちに、青い鳥は少しずつ元気を取り戻していきました。

ある朝、おじいさんが鳥かごの中へ指を差し出してみました。

すると青い鳥は、ぴょん、とその指の上へ飛び乗りました。

「はっはっは。ずいぶん元気になったな」

「ピィーッ!」

青い鳥も嬉しそうに鳴きました。

やがて長かった冬が終わりました。

屋根の雪がぽたぽたと溶け、山にはふきのとうが顔を出しました。

川の水も勢いを増し、村には少しずつ春の気配が広がっていきました。

そんなある朝のことです。

青い鳥が鳥かごから出ると、窓辺へ飛び移りました。

そして、じっと外の空を見つめています。

おばあさんは、その様子をしばらく見ていました。

「おじいさん」

「うん?」

「この子、空へ帰りたいんでしょうね」

おじいさんも青い鳥を見ました。

窓の向こうには、春の青空がどこまでも広がっています。

「そうだな」

おじいさんは静かに窓を開けました。

春の風が、ふわりと部屋の中へ入り込んできました。

けれど、青い鳥はすぐには飛び立ちませんでした。

窓辺に止まったまま、おじいさんとおばあさんの顔を交互に見つめています。

「大丈夫だよ。元気になってよかった」

おばあさんが言いました。

「さあ、また空を自由に飛んでおいで」

おじいさんも笑いました。

すると青い鳥は大きく羽を広げました。

「ピィーーッ!」

ひときわ大きく鳴くと、青い鳥は窓から勢いよく飛び出しました。

高く、高く、春の空へ舞い上がっていきます。

そして家の上を大きく一周しました。

まるで別れを惜しむように、もう一度、二人の頭上を飛びました。

「元気でね!」

おばあさんが手を振ります。

青い鳥は最後にもう一度、

「ピィーッ!」

と鳴くと、山の向こうへ飛んでいきました。

「少し寂しくなるなあ」

おじいさんが言いました。

「ええ。でも、元気になって本当によかった」

二人は青い鳥の姿が見えなくなるまで、空を眺めていました。

それから数週間が過ぎました。

春も深まり、おじいさんはいつものように畑へ野菜の種をまきました。

ところが、その年は少し様子が違いました。

まいた種が次々と芽を出し、どれも驚くほど元気に育っていったのです。

大根は太く立派になり、豆は枝いっぱいに実りました。

白菜も、おじいさんが両腕で抱えなければ持てないほど大きく育ちました。

「ばあさん、見てみなさい。今年の畑はすごいぞ」

「まあ、本当に。こんなに立派に育つなんて」

「こんな豊作は初めてだ」

二人は大喜びしました。

ところが、不思議なことはそれだけではありませんでした。

ある朝、おばあさんが戸を開けると、庭の隅に見たこともない花が一輪咲いていました。

空のように澄んだ、青い花でした。

「まあ、きれいな花……」

おばあさんはしゃがみ込み、しばらく花を眺めていました。

次の日になると、青い花は二輪になっていました。

その次の日には三輪。

さらに次の日には、また新しい花が咲きました。

一輪、また一輪と増えていき、やがて庭いっぱいに青い花が咲き誇るようになりました。

風が吹くたび、たくさんの青い花が一斉に揺れました。

その美しさは、たちまち村中で評判になりました。

「なんてきれいな花なんだ」

「こんな花、今まで見たことがないよ」

「まるで空が庭に降りてきたみたいだねえ」

村の人たちは次々と二人の家を訪れるようになりました。

おじいさんとおばあさんは、花を見に来た人たちにお茶を出しました。

畑で採れた野菜も、

「たくさんできたから持っていきなさい」

と分けてあげました。

すると村の人たちも、

「この前のお礼だよ」

と果物を持ってきたり、

「今朝、川で捕れたんだ」

と魚を届けてくれたりするようになりました。

いつしか二人の家には人が集まり、毎日のように楽しそうな笑い声が聞こえるようになりました。

そんなある晩のことです。

夜もすっかり更けたころ、おじいさんは戸締まりをするために外へ出ました。

庭には月の光が静かに降り注いでいました。

青い花も、昼間とは違う淡い色で揺れています。

そのときです。

「ピィ……」

聞き覚えのある声がしました。

おじいさんは足を止めました。

「ん?」

もう一度、声が聞こえました。

「ピィーッ」

庭の木を見上げると、一本の枝に一羽の青い鳥が止まっていました。

月明かりを受け、その羽は青く、きらきらと輝いています。

「あっ……!」

おじいさんはすぐに分かりました。

「ばあさん、来てごらん!」

家の中から、おばあさんが急いで出てきました。

「あら……あの子!」

春の日に空へ帰っていった、あの青い鳥でした。

青い鳥は枝から飛び立つと、おじいさんとおばあさんの周りをゆっくりと飛びました。

一度。

二度。

そして三度。

二人は何も言わず、その姿を見つめていました。

やがて青い鳥は夜空へ向かって高く舞い上がりました。

そのとき、一枚の青い羽が鳥の体から離れました。

羽は月の光を受けながら、ひらり、ひらりと舞い降りてきました。

おじいさんが両手を差し出すと、その青い羽は手のひらへそっと落ちました。

「ありがとう、と言ってくれているのかもしれないねえ」

おばあさんが言いました。

おじいさんは青い羽を見つめ、静かにうなずきました。

「そうかもしれんな」

二人がもう一度空を見上げると、青い鳥は月のそばを飛んでいました。

「ピィーッ!」

澄んだ鳴き声が、静かな夜の村に響きました。

翌朝、おじいさんとおばあさんは青い羽を床の間に飾りました。

それからも二人は、これまでと変わらず畑を耕し、村の人たちと助け合いながら暮らしました。

畑には毎年たくさんの野菜が実り、庭には春になると青い花が咲きました。

二人の家にはいつも誰かが訪れ、楽しそうな笑い声が聞こえていました。

そして、ときどき二人が空を見上げると、遠い山の向こうから懐かしい声が聞こえてきました。

「ピィーッ」

「おじいさん、聞こえましたか?」

「ああ、聞こえたよ」

二人は顔を見合わせて笑いました。

遠い青空には、小さな青い鳥が一羽、楽しそうに飛んでいました。

おしまい。

登場人物

  • おじいさん
    山で薪を拾い、小さな畑を耕しながら暮らしている心優しいおじいさん。雪の中で傷ついていた青い鳥を助けます。
  • おばあさん
    おじいさんと穏やかに暮らす、面倒見の良いおばあさん。傷ついた青い鳥を温め、毎日大切に世話をします。
  • 青い鳥
    冬の山で傷つき、雪の上に倒れていた美しい鳥。元気になって空へ帰ったあと、再び二人の前に姿を現します。

教訓

  • 見返りを求めずに誰かを助ける優しさは、思わぬ形で周りへ広がっていくことがあります。
  • 人や生き物を思いやる気持ちを大切にすることを伝えてくれるお話です。
  • 「ありがとう」という感謝の気持ちは、言葉だけでなくさまざまな形で伝えることができます。

親子で話したいポイント

  • おじいさんは、どうして青い鳥を助けたのかな?
  • 自分だったら、傷ついた鳥を見つけたときに何をしてあげたい?
  • 誰かに優しくしてもらって嬉しかったことはある?
  • 「ありがとう」を伝えたい人はいるかな?
  • 青い鳥は、どんな気持ちでおじいさんとおばあさんの家へ戻ってきたと思う?

保育士向け活用ポイント

  • 「思いやり」「感謝」「生き物を大切にする気持ち」をテーマにした読み聞かせに活用しやすい作品です。
  • 青い鳥を助ける場面では、「みんなだったらどうする?」と問いかけることで、子ども自身の考えを引き出せます。
  • 読み聞かせ後に「ありがとうを伝えたい人」を考えたり、発表したりする活動へつなげることもできます。
  • 青い花や青い羽など、物語に登場する印象的なものを題材に、絵画や製作活動へ発展させることもできます。
  • 3〜5歳児を中心に、相手を思いやる気持ちや、生き物との関わりについて考えるきっかけとして活用できます。

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