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あらすじ
むかしむかし、お釈迦さまが極楽から地上を見ていると、一人の男のことを思い出しました。
その男は生きていた頃、たくさんの悪いことをしていました。
けれど、一度だけ小さな蜘蛛の命を助けたことがありました。
お釈迦さまは、そのたった一つの優しさを信じて、蜘蛛の糸を垂らします。
男は天へ登ろうとしますが、その途中で大切なことを忘れてしまいます。
本文
むかしむかし、きらきらと光る極楽の庭を、お釈迦さまがゆっくり歩いていました。
池には美しい蓮の花が咲き、風が吹くたびに花びらが揺れています。
お釈迦さまは池の水面をのぞき込みました。
すると、遠い下の世界の様子が見えました。
そこには、たくさんの人が苦しんでいる場所がありました。
その中に、かんだたという男がいました。
かんだたは、生きていた頃に悪いことをたくさんしてきた人でした。
人の物を盗んだこともありました。
人を困らせたこともありました。
けれど、お釈迦さまは一つだけ覚えていることがありました。
ある日、かんだたが森を歩いていると、一匹の小さな蜘蛛が足元を歩いていました。
かんだたは踏みつけようとしました。
けれど、その時ふと思ったのです。
「小さな命でも、生きているんだ。」
そう考えて、蜘蛛を逃がしてあげました。
それは、かんだたがしたたった一つの優しい行いでした。
お釈迦さまは静かに言いました。
「その優しい心を信じてみよう。」
すると、お釈迦さまは蓮の葉の上にいた蜘蛛を見つけました。
そして、その蜘蛛の糸をそっと下の世界へ垂らしたのです。
細く長い糸は、まっすぐかんだたのところまで届きました。
かんだたは驚きました。
「なんだ、この糸は。」
かんだたは周りを見回しました。
誰も気づいていません。
「これを登れば、ここから出られるかもしれない。」
かんだたは一生懸命に糸を登り始めました。
少し登っては休みます。
また少し登っては休みます。
長い長い道のりでした。
でも、かんだたはあきらめませんでした。
「もう少しだ。」
「もっと上へ行こう。」
やがて、下の方を見たかんだたは驚きました。
たくさんの人たちが、同じ蜘蛛の糸を登ってきていたのです。
「大変だ!」
かんだたは叫びました。
「この糸は俺のものだ!」
「お前たちは登ってくるな!」
その瞬間でした。
ぷつん。
蜘蛛の糸は切れてしまいました。
かんだたは驚きました。
そして、また元いた場所へ戻ってしまいました。
極楽からその様子を見ていたお釈迦さまは、悲しそうな顔をしました。
「せっかく助かる道があったのに。」
お釈迦さまは言いました。
「自分だけが助かろうとすると、心は狭くなってしまう。」
「誰かを思いやる気持ちがあれば、違う結果になったかもしれない。」
池の蓮の花は静かに揺れていました。
蜘蛛の糸は、とても細い糸です。
けれど、人を思いやる気持ちは、その糸よりもずっと強いものなのかもしれません。
そして、人はいつでもやり直すことができます。
かんだたもまた、いつか本当の優しさを見つける日が来るでしょう。
おしまい。
登場人物
- かんだた
生前に悪いことをしていましたが、一度だけ蜘蛛の命を助けた人物。 - お釈迦さま
かんだたの小さな優しさを信じ、蜘蛛の糸を垂らした存在。 - 蜘蛛
かんだたに助けられた小さな命。
教訓
- 小さな優しさにも大きな意味がある。
- 自分だけではなく、周りの人のことを考えることが大切。
- 人は失敗をしても、やり直すことができる。
親子で話したいポイント
- かんだたは、どうして蜘蛛を助けたのかな?
- 「自分だけ」ではなく「みんなで」という気持ちはどんな時に必要かな?
- もし自分が蜘蛛の糸を登っていたら、どうしたと思う?
保育士向け活用ポイント
- 「思いやり」や「協力する気持ち」を考える教材として活用できます。
- 年長児では「自分だけが良ければいいのか」というテーマで対話活動に発展できます。
- 集団生活におけるルールや助け合いについて考える導入教材として活用できます。


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