宝くらべ(たからくらべ)

日本の昔話
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あらすじ

むかしむかし、豊かな国を治める殿様が、家来や村人たちにこう尋ねました。

「おぬしたちにとって、一番の宝とは何だ?」

ある者は金銀財宝と答え、ある者は広い田畑、またある者は立派な家だと答えました。

そんな中、一人の貧しい少年だけは、みんなとは違う答えを口にします。

その言葉は殿様の心を大きく動かし、やがて国中の人々が「本当の宝物」について考えるきっかけとなるのでした。


本文

むかしむかし、緑豊かな山や川に囲まれた国がありました。

その国には、人々から慕われている殿様が住んでいました。

殿様は立派なお城に住んでいましたが、お金や宝石を自慢することはありません。

困っている人がいれば助け、

豊作の年には村人と一緒に喜び、

不作の年には米蔵を開いて食べ物を分け与えるような人でした。

ある日のこと。

殿様は家来たちを集めて言いました。

「今日は皆に聞きたいことがある。」

「おぬしたちにとって、一番の宝とは何だ?」

家来たちは顔を見合わせました。

最初に武士が答えます。

「立派な刀でございます。」

商人は言いました。

「金や銀こそ宝です。」

農家の人は胸を張りました。

「広い田んぼが一番です。」

大工は、

「丈夫な家です。」

漁師は、

「大きな船です。」

それぞれが、自分にとって大切なものを答えました。

殿様は、

「なるほど。」

とうなずきながら聞いていました。

その時、人混みの後ろで、小さな手が上がりました。

それは、村に住む貧しい少年でした。

「私も答えていいですか?」

殿様は優しく言いました。

「もちろんだ。」

少年は少し緊張しながら答えました。

「私の宝は、お父さんとお母さんです。」

広間は静かになりました。

殿様は尋ねます。

「どうしてそう思うのだ?」

少年はゆっくり話し始めました。

「家は古いです。」

「お金もあまりありません。」

「でも、毎日一緒にご飯を食べて、一緒に笑ってくれます。」

「私が病気になった時は、夜中まで看病してくれました。」

「だから、お父さんとお母さんが一番の宝です。」

殿様は何も言えませんでした。

しばらくして、大きくうなずきました。

「素晴らしい答えだ。」

その日、殿様は家来たちに言いました。

「金は失うことがある。」

「田畑も災害でなくなることがある。」

「けれど、人を大切に思う心は、誰にも奪われない。」

家来たちは静かに頭を下げました。

それから数年後。

大きな嵐が国を襲いました。

橋は流され、

畑は水につかり、

家もたくさん壊れてしまいました。

けれど村人たちは力を合わせました。

大工は家を直し、

農家は種を分け合い、

漁師は魚を届けました。

殿様も米蔵を開きました。

そして、あの少年の家族も毎日みんなを手伝いました。

ある日、殿様は少年に言いました。

「あの日、おぬしが教えてくれた宝のおかげで、この国は助け合うことができた。」

少年は照れくさそうに笑いました。

「みんなが助けてくれたからです。」

殿様も笑いました。

「その『みんな』こそ、本当の宝なのだな。」

それ以来、この国では、子どもたちが大きくなると、

「あなたの宝物は何ですか。」

と尋ねる習わしができました。

金でも、

宝石でもなく、

大切な人の名前を答える子どもがたくさんいたそうです。

そしてその国は、長い間、助け合いの心を忘れない国として語り継がれました。

おしまい。


登場人物

  • 殿様
    人々を大切にする、思いやりのある国の殿様。
  • 少年
    「家族が一番の宝」と答える心優しい主人公。
  • 家来たち
    それぞれ自分の宝を答える武士や商人、農家たち。
  • 村人たち
    助け合いながら暮らす人々。

教訓

  • 本当の宝物は、お金ではなく大切な人とのつながりである。
  • 助け合う心が人を豊かにする。
  • 感謝の気持ちを忘れずに生きることが大切。

親子で話したいポイント

  • あなたにとって一番の宝物は何かな?
  • どうして少年は家族を宝物だと言ったのかな?
  • 家族や友だちに「ありがとう」を伝えたいことはある?

保育士向け活用ポイント

  • 家族への感謝や命のつながりについて考える活動に活用できます。
  • 敬老の日や家族をテーマにした保育、道徳教材としても適しています。
  • 読み聞かせ後に「わたしのたからもの」を絵や言葉で表現する活動へ発展させることができます。

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