ガリバー旅行記|世界の名作・昔話(イギリス文学)

世界の名作・昔話

あらすじ

むかし、ガリバーという船乗りがいました。

ガリバーは海を渡り、まだ見たことのない世界を旅することが大好きでした。

ある航海の途中、大嵐に巻き込まれたガリバーは海へ投げ出され、不思議な国へ流れ着きます。

そこで暮らしていたのは、ガリバーよりもずっと小さな人々でした。

小人たちの国では、ガリバーはまるで巨人です。

ところが別の旅では、今度はガリバーよりもはるかに大きな巨人たちが暮らす国へたどり着きます。

そこでは反対に、ガリバーのほうが小さな存在になってしまいました。

さまざまな国を旅する中で、ガリバーは、自分が「普通」「当たり前」だと思っていたことが、場所が変わればまったく違って見えることに気づいていきます。

本文

むかし、ガリバーという船乗りがいました。

ガリバーは海が大好きでした。

港に大きな船が入ってくると、

「あの船は、どんな国から来たのだろう。」

遠くへ向かう船を見れば、

「海の向こうには、どんな世界があるのだろう。」

そんなことを考えていました。

やがてガリバーは船に乗り、世界中を旅するようになりました。

青く穏やかな海を進む日もあれば、波に揺られながら航海する日もあります。

そして、ある航海の途中のことでした。

空が少しずつ暗くなってきました。

「雲行きがおかしいぞ。」

船乗りたちが空を見上げます。

遠くで低い雷の音が聞こえました。

ごろごろ……。

やがて風が強くなってきます。

ひゅうううう……。

海も、さっきまでとはまるで違う姿になりました。

大きな波が船へ押し寄せます。

ざばーん!

「嵐だ!」

船の上は大騒ぎになりました。

帆をたたもうとしても、風が強すぎます。

船は右へ左へ大きく揺れました。

ざばーん!

また大きな波が船を襲います。

ガリバーは必死に船につかまりました。

「このままでは……!」

けれど嵐は、ますます激しくなっていきました。

やがて船は壊れ、ガリバーは荒れ狂う海へ投げ出されてしまいました。

「うわっ!」

冷たい海の中へ沈みます。

ガリバーは必死に水面へ顔を出しました。

どちらを見ても大きな波ばかり。

船の姿も見えません。

「陸はどこだ……?」

ガリバーは夢中で泳ぎました。

どれくらい泳いだでしょう。

やがて足の先が地面に触れました。

「陸だ……!」

ガリバーは残った力を振りしぼり、浜辺へ上がりました。

もう一歩も歩けません。

そのまま地面に横になると、深い眠りに落ちてしまいました。

しばらくして――。

ガリバーは目を覚ましました。

空はすっかり明るくなっています。

「ここは……どこだ?」

起き上がろうとしました。

ところが。

「ん?」

体が動きません。

もう一度、力を入れてみます。

けれど腕も足も動かせません。

「いったい、どうしたんだ?」

ガリバーは自分の体を見ようとしました。

すると――。

腕や足、体のあちこちに、細い縄が何本も結びつけられていました。

「縄?」

さらに、顔の近くで何かが動きました。

かさっ。

「なんだ?」

目だけを動かして見てみると――。

ガリバーは驚きました。

そこにいたのは、とても小さな人でした。

手のひらに乗ってしまいそうなほどの小さな人です。

「人……なのか?」

一人ではありません。

二人。

三人。

その向こうにも。

たくさんの小さな人々が、ガリバーを取り囲んでいました。

小さな人々も、ガリバーを見上げながら大騒ぎしています。

「なんて大きいんだ!」

「こんな人を見たことがない!」

「動いたぞ!」

ガリバーが少し体を動かすだけで、小人たちは驚いて逃げていきます。

ガリバーも困りました。

「怖がらせるつもりはないんだ。」

けれど、ガリバーの声は小人たちにとって、とても大きく聞こえました。

小人たちはまた慌てます。

ガリバーは、できるだけ静かにしていることにしました。

そして周囲を見ながら、少しずつ状況を理解していきました。

どうやらガリバーは、自分よりもずっと小さな人々が暮らしている国へ流れ着いたようです。

そこでは、家も小さく。

道も小さく。

人々が使う道具も小さなものでした。

ガリバーが立ち上がれば、周囲のものが何もかも小さく見えます。

「この国では、私が巨人なのか……。」

小人たちにとって、ガリバーは見たこともないほど巨大な存在でした。

最初はお互いを警戒していました。

ガリバーには、小人たちの暮らしが不思議に見えます。

小人たちにも、巨大なガリバーのすることが不思議に見えました。

食事をするだけでも大変です。

ガリバーが一度に食べる量は、小人たちから見れば驚くほどたくさんでした。

歩けば一歩がとても大きく、小人たちが何歩も歩く距離を簡単に進んでしまいます。

「同じ人なのに、こんなにも違うのか。」

ガリバーは驚きました。

やがてガリバーは、その不思議な国を離れ、再び旅を続けることになりました。

そして――。

別の航海で、また知らない土地へたどり着きました。

「今度は、どんなところだろう。」

ガリバーは辺りを見回しました。

すると、何となく様子がおかしいことに気づきました。

植物が大きいのです。

草も。

木も。

何もかも、自分の知っているものよりはるかに大きく見えます。

「ずいぶん大きな植物だな……。」

そのとき。

ずしん。

地面がわずかに揺れました。

「なんだ?」

ずしん。

ずしん。

何かが近づいてきます。

ガリバーは振り返りました。

そして――。

「うわっ!」

思わず声を上げました。

そこにいたのは、人でした。

けれど、とてつもなく大きな人です。

見上げても、顔がずっと高いところにあります。

「巨人だ……!」

ガリバーは慌てて身を隠しました。

ずしん。

ずしん。

巨人が歩くたびに、地面へ響くような音がします。

小人たちの国では、自分が巨大な存在でした。

ところが今度は、まったく反対です。

この国では――。

ガリバーのほうが小さな存在なのです。

「なんということだ……。」

巨人たちが使うものは、何もかも巨大でした。

家も。

家具も。

食べ物も。

動物までも。

ガリバーが普段使っているものとは、まるで大きさが違います。

大きな手が近づいてくるだけでも、ガリバーには恐ろしく感じられました。

「小人たちも、私を見たときはこんな気持ちだったのだろうか……。」

ガリバーは、ふと思いました。

小人たちの国では、自分が一番大きかった。

自分が少し動くだけで、小人たちは驚いていました。

けれど今は、自分が巨人たちの動きを怖がっています。

ガリバーは初めて、あの小人たちの気持ちが少し分かったような気がしました。

「大きいということも、小さいということも、見る場所によって変わるんだな。」

旅を続けるうちに、ガリバーはさまざまな違いに出会いました。

違うのは体の大きさだけではありません。

食べるもの。

暮らし方。

使っている道具。

人々の考え方。

そして、国の中で起こる争いにも、それぞれ違いがありました。

ガリバーにとって、

「どうしてそんなことをするのだろう?」

と思うこともありました。

けれど反対に、ガリバーの国では当たり前のことを、不思議に思う人々もいました。

そのたびに、ガリバーは考えるようになりました。

「自分が当たり前だと思っているからといって、世界中で同じとは限らないのだ。」

小人たちの国では、ガリバーは巨人でした。

巨人たちの国では、ガリバーは小さな存在でした。

同じガリバーなのに、いる場所が変わるだけで見え方がまったく変わってしまいます。

「では、自分が正しいと思っていることも、別の場所から見れば違って見えるのかもしれない。」

ガリバーは旅をするたびに、知らなかった世界を知っていきました。

そして新しい世界を知るたび、自分自身についても考えるようになっていきました。

長い旅の末――。

ガリバーは、ようやく自分の国へ帰ってきました。

見慣れた町。

見慣れた家。

いつもと変わらない人々。

以前なら、それを何も不思議に思わなかったでしょう。

けれど今のガリバーには、少し違って見えました。

「ここでは、これが普通なんだ。」

ガリバーは小人たちの国を思い出しました。

自分を見上げて驚いていた、小さな人々。

そして巨人たちの国を思い出しました。

巨大な人々を見上げながら、自分がとても小さく感じたこと。

同じ世界の中に、自分が知らなかった暮らしや考え方がたくさんありました。

ガリバーは海を眺めました。

その向こうには、まだ自分の知らない世界が広がっています。

旅に出る前のガリバーは、自分の知っているものを当たり前だと思っていました。

けれど今は違います。

「世界には、いろいろな生き方があるのだ。」

ガリバーは、遠くまで続く海を静かに眺めていました。

おしまい。

登場人物

ガリバー
海を渡り、世界中を旅する船乗り。航海の途中でさまざまな不思議な国を訪れ、自分とは大きさも暮らし方も考え方も異なる人々と出会います。

小人たち
ガリバーが流れ着いた国で暮らしている、とても小さな人々。彼らにとってガリバーは見たこともないほど大きな巨人です。

巨人たち
別の旅でガリバーが訪れた国に暮らす、とても大きな人々。小人たちの国とは反対に、ここではガリバーのほうが小さな存在になります。

教訓

自分にとって「普通」や「当たり前」だと思っていることが、誰にとっても同じとは限らない。

立場や見る場所が変わることで、同じものでもまったく違って見えることがある。

自分とは異なる暮らしや考え方を知ることは、相手を理解するだけではなく、自分自身の考え方を見つめ直すことにもつながる。

親子で話したいポイント

小人たちの国では大きかったガリバーが、巨人たちの国ではどうして小さく見えたのかな?

自分が「普通だ」と思っていることには、どんなものがある?

自分とは違う考え方の人がいたら、どうしたらいいだろう?

小人になったら何をしてみたい? 巨人になったら何をしてみたい?

知らない国へ行けるとしたら、どんなことを知りたい?

保育士向け活用ポイント

「大きい・小さい」という分かりやすい違いから、物の見え方や立場の違いについて考える活動に活用できます。

同じ積み木や玩具でも、遠くから見る、近くから見る、低い場所から見るなど視点を変えることで、「見る場所によって違って見える」という体験につなげられます。

また、ガリバーがさまざまな国を訪れる展開から、世界の国々の食べ物や服装、住まい、言葉などを調べる活動へ広げることもできます。

「違う=おかしい」とするのではなく、「こんな違いもあるんだね」と気づき、楽しむことを通して、多文化理解や一人ひとりの違いを認める保育の導入にもつなげられます。

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