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あらすじ
むかしむかし、街道沿いの小さな町に、おいしいそばで評判のそば屋がありました。
ところが夜になると、なぜか店のそばが少しずつ減っていきます。
店主のおじさんは泥棒を疑いますが、ある晩、店にやってきたのは意外なお客さんでした。
食いしん坊なたぬきと、人情味あふれるそば屋の主人との心温まるお話です。
本文
むかしむかし、山と町をつなぐ街道沿いに、小さなそば屋がありました。
店を切り盛りしているのは、働き者の主人と奥さんです。
主人が打つそばは評判で、
「この町で一番おいしい。」
と旅人たちにも人気でした。
毎日たくさんのお客さんが訪れます。
ある日のことでした。
店じまいをした主人が、ふと棚を見ると、残しておいたそばが少し減っています。
「あれ?」
主人は首をかしげました。
「気のせいかな。」
ところが次の日も、
その次の日も、
そばは少しずつ減っていきました。
主人は困りました。
「泥棒だろうか。」
奥さんも心配そうです。
「今夜、見張ってみましょう。」
その夜。
主人は店の奥に隠れて様子を見ていました。
月が高く昇った頃、
戸が少しだけ開きました。
すると――
とことこ。
一匹のたぬきが入ってきました。
たぬきは辺りをきょろきょろ見回します。
そして残っていたそばを見つけると、
つるつるつる。
おいしそうに食べ始めました。
主人は思わず飛び出しました。
「こら!」
たぬきはびっくりして飛び上がりました。
「ご、ごめんなさい!」
主人は驚きました。
「しゃべった!」
たぬきは耳を伏せました。
「山で食べ物が見つからなくて・・・。」
「でも、お金がないから買えなかったんです。」
主人は黙って話を聞いていました。
しばらくして言いました。
「お腹が空いていたんだな。」
たぬきは小さくうなずきました。
主人は新しいそばをゆで始めました。
湯気が立ち上ります。
「ほら、できたぞ。」
たぬきは驚きました。
「食べていいんですか?」
「もちろん。」
たぬきは夢中になって食べました。
「おいしい!」
主人も奥さんも笑顔になりました。
次の日の夜。
たぬきは小さなきのこを持ってきました。
「昨日のお礼です。」
その次の日は山菜。
また次の日は栗。
たぬきは少しずつ恩返しをするようになりました。
やがて主人は言いました。
「夜だけの手伝いをしてくれないか?」
たぬきは目を丸くしました。
「私がですか?」
「店の掃除や片付けを手伝ってくれると助かる。」
それから夜になると、
たぬきは箒を持って掃除をしました。
机を拭き、
椅子を並べ、
店を整えます。
町の人たちは不思議に思いました。
「どうしてこんなに店がきれいなんだろう。」
主人は笑うだけでした。
やがて春が来ました。
山にも食べ物が戻ってきました。
たぬきは言いました。
「そろそろ山へ帰ります。」
主人は少し寂しくなりました。
「いつでも食べに来い。」
たぬきは深く頭を下げました。
「ありがとうございます。」
それからというもの、満月の夜になると、店の前には山の栗やきのこが置かれていることがありました。
主人はそのたびに笑いました。
「また来たな。」
そして夜の店の奥から、
ころころと笑うたぬきの声が聞こえたそうです。
おしまい。
登場人物
- そば屋の主人
優しく人情味あふれる店主。 - 奥さん
主人と一緒に店を支える働き者。 - たぬき
山で食べ物が見つからず困っていた化けだぬき。 - 町の人たち
そば屋を愛する常連客たち。
教訓
- 困っている相手には事情があるかもしれない。
- 優しさは新しいつながりを生む。
- 感謝の気持ちは行動で伝えることができる。
親子で話したいポイント
- 主人はどうしてたぬきを怒らなかったのかな?
- たぬきはどんな方法で「ありがとう」を伝えたかな?
- 自分ならどんな恩返しをしてみたい?
保育士向け活用ポイント
- 思いやりや共感を育てる読み聞かせ教材として活用できます。
- 「困っている理由を考える力」を育むきっかけになります。
- 食育活動や地域のお店について学ぶ導入にも活用しやすい作品です。


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