金のたまごを産むガチョウ|世界の名作・昔話(イソップ童話)

世界の名作・昔話

あらすじ

むかしむかし、小さな村に一羽のガチョウを大切に育てている夫婦がいました。

ある朝、夫婦がガチョウの巣をのぞいてみると、そこにはきらきらと輝く金色のたまごがありました。

驚いた夫婦が町へ持っていくと、それは本物の金でできたたまごでした。

それからガチョウは、毎朝一つずつ金のたまごを産むようになります。

夫婦の暮らしは少しずつ豊かになっていきました。

ところが、いつしか二人の心には「もっとたくさん欲しい」という気持ちが生まれます。

そして、すべての金を一度に手に入れようと考えた夫婦は、大きな間違いをしてしまうのでした。

「欲張りすぎないこと」「今あるものに感謝すること」「少しずつ積み重ねることの大切さ」を教えてくれるイソップ童話の名作です。


本文

むかしむかし、小さな村に仲の良い夫婦が住んでいました。

夫婦は決して裕福ではありませんでしたが、毎日一生懸命に働きながら暮らしていました。

二人の家には、一羽のガチョウがいました。

夫婦はそのガチョウをとても大切にしていました。

毎朝えさをやり、

きれいな水を用意し、

安心して眠れるように寝床も整えていました。

そんなある朝のことです。

いつものように夫婦がガチョウの様子を見に行くと、巣の中で何かが光っていました。

「ん?」

夫が近づいてみます。

朝の光を受けて、きらり。

そこには、見たこともないほど美しい金色のたまごがありました。

「これは……?」

妻も驚いて駆け寄りました。

二人はそっとたまごを持ち上げました。

普通のたまごとは違い、ずっしりと重く感じます。

「まさか……金じゃないだろうね?」

「そんなことがあるのかしら。」

夫婦は半信半疑のまま、金色のたまごを町へ持っていきました。

すると――。

「これは本物の金ですよ。」

そう言われた夫婦は、顔を見合わせました。

「本当に金のたまごだったんだ!」

二人は大喜びしました。

その日は、うれしくてたまりませんでした。

けれど、不思議な出来事はそれだけではありませんでした。

次の日の朝。

夫婦がガチョウの巣をのぞいてみると――。

きらり。

また一つ、金のたまごがありました。

「また産んでいる!」

そして、その次の日も。

さらに次の日も。

ガチョウは毎朝、一つずつ金のたまごを産みました。

夫婦は、毎朝ガチョウの巣を見るのが楽しみになりました。

「今日もありがとう。」

二人はガチョウを大切にしながら、金のたまごを一つずつ受け取りました。

そうして夫婦の暮らしは、少しずつ豊かになっていきました。

古くなっていた家を直すことができました。

おいしい食事も食べられるようになりました。

暮らしに余裕ができると、困っている人にも親切にすることができました。

夫婦は幸せでした。

毎日一つ。

また次の日も一つ。

金のたまごは、少しずつ夫婦の暮らしを変えていきました。

ところが――。

豊かな暮らしに慣れてくると、夫婦の気持ちにも少しずつ変化が現れました。

ある日、夫は金のたまごを手にしながら考えました。

「毎日一つか……。」

最初は一つの金のたまごだけでも大喜びしていたはずなのに、今ではそれだけでは物足りないように感じてしまったのです。

夫は妻に言いました。

「毎日一つずつ待つのは、もったいなくないか?」

妻は首をかしげました。

「どういうこと?」

夫はガチョウを見ながら言いました。

「このガチョウは毎日、金のたまごを産んでいる。」

「ということは、おなかの中にはもっとたくさんの金があるんじゃないか?」

妻も考え込みました。

「もしかしたら……。」

「たくさんの金のたまごが入っているのかもしれないわね。」

一度そう考え始めると、二人の頭からそのことが離れなくなりました。

毎朝一つずつではなく、今すぐ全部欲しい。

十個。

二十個。

もしかしたら、それよりもっとたくさん入っているかもしれない。

「全部まとめて手に入れられたら、もっと豊かになれる。」

夫婦の心の中で、「もっと欲しい」という気持ちがどんどん大きくなっていきました。

そしてとうとう、二人は言いました。

「おなかの中にある金のたまごを、全部まとめて取り出そう。」

夫婦は、大切に育ててきたガチョウのおなかを開いてしまいました。

けれど――。

二人が期待していたような金のたまごは、どこにもありませんでした。

ガチョウのおなかの中にあったのは、普通の体だけだったのです。

「そんな……。」

夫婦は呆然としました。

「金のたまごは?」

「どこにもない……。」

そのときになって、二人は自分たちが何をしてしまったのかに気づきました。

毎朝一つずつ金のたまごを産んでくれていた、大切なガチョウ。

そのガチョウを、自分たちの欲のために失ってしまったのです。

もちろん、もう金のたまごが産まれることもありません。

次の日の朝。

夫婦が巣を見ても、そこには何もありませんでした。

その次の日も。

何日待っても、金のたまごが現れることはありませんでした。

「毎日一つずつでも、十分だったのに……。」

夫がぽつりと言いました。

妻もうつむきました。

「どうして、もっと欲しいと思ってしまったんだろう。」

「ガチョウを大切にしていればよかった。」

二人は深く後悔しました。

毎朝一つずつ手に入っていた金のたまご。

ガチョウと暮らしていた穏やかな日々。

それは当たり前に続くものではありませんでした。

夫婦は、自分たちが持っていた幸せの大きさに、失ってから気づいたのです。

それから二人は、もう欲張って一度にすべてを手に入れようとはしなくなりました。

毎日の暮らしの中にある小さな幸せを大切にし、一つずつ積み重ねながら暮らしていきました。

おしまい。


登場人物

夫婦

小さな村で暮らす仲の良い夫婦です。最初はガチョウを大切にし、毎日一つずつ手に入る金のたまごに感謝していました。しかし、次第に「もっと欲しい」という気持ちが大きくなり、大切なガチョウを失ってしまいます。

ガチョウ

夫婦が大切に育てている不思議なガチョウです。毎朝一つずつ、本物の金でできたたまごを産みます。


教訓

  • 欲張りすぎると、今持っている大切なものまで失ってしまうことがある。
  • 当たり前にあるものにも感謝することが大切。
  • 一度にたくさん手に入れようとせず、少しずつ積み重ねていくことにも大きな価値がある。
  • 「もっと欲しい」と思ったときこそ、今持っているものの大切さを考えることが必要。

親子で話したいポイント

  • 夫婦は、どうしてガチョウのおなかを開けてしまったのかな?
  • 最初のころの夫婦と、途中からの夫婦では何が変わったと思う?
  • 「もっと欲しい」と思ったことはあるかな?
  • 毎日少しずつ続けることで、できるようになったことはある?
  • 今、自分のそばにある大切なものは何だろう?

保育士向け活用ポイント

保育者自身にとっても、子どもの成長を急いで結果だけを求めるのではなく、一日一日の小さな変化や積み重ねを大切に見守ることを振り返るきっかけになります。

「欲しい気持ちとの付き合い方」「待つこと」「今あるものを大切にすること」について考える読み聞かせとして活用できます。

子どもにとって「もっと欲しい」「今すぐ欲しい」という気持ちは自然なものです。その気持ち自体を否定するのではなく、「待ったらどうなるかな?」「今あるものはどうしよう?」と考える経験につなげることができます。

毎日一つずつ金のたまごを産む場面から、「少しずつ続けること」を身近な生活や遊び、練習などと結びつけて考えることができます。

非認知能力の一つである自己コントロールや、先のことを考えて行動する力について考える題材にもなります。

「欲張るのは悪いこと」と単純に伝えるのではなく、欲しいという気持ちが大きくなりすぎたときに、どんなことが起こる可能性があるのかを子どもたちと考えることが大切です。

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