あらすじ
むかしむかし、働き者のかにと、少しずる賢い猿がいました。
ある日、かには道で拾ったおにぎりを、猿が持っていた柿の種と交換します。
かには柿の種を大切に育て、やがて木にはたくさんの実がなりました。
ところが、木に登れないかにの代わりに柿を取ることになった猿は、おいしい柿を独り占めしてしまいます。
さらに猿のひどい仕打ちによって、かには傷ついてしまいました。
それを知った仲間たちは、かにのために力を合わせます。
本文
むかしむかし、川の近くに一匹のかにが住んでいました。
ある日のことです。
かにが道を歩いていると、大きなおにぎりを見つけました。
「わあ、おいしそうなおにぎりだ。」
そこへ、猿がやってきました。
猿の手には、小さな柿の種があります。
猿はかにのおにぎりを見ると、言いました。
「そのおにぎりと、この柿の種を交換しないかい?」
かには不思議そうに尋ねました。
「でも、この種はこんなに小さいよ?」
すると猿は言いました。
「おにぎりは食べたらなくなってしまうだろう?」
「でも、柿の種を植えれば、やがてたくさんの柿がなるぞ。」
かには少し考えました。
「それもそうだね。」
こうして、かにはおにぎりと柿の種を交換しました。
猿はさっそく、おにぎりをぺろりと食べてしまいました。
かには柿の種を持ち帰り、土に植えました。
そして毎日、大切に水をあげました。
「早く芽を出せ、柿の種。」
やがて小さな芽が出て、少しずつ大きくなっていきました。
春が過ぎ、夏が過ぎ、秋になるころには、立派な柿の木になりました。
枝には、たくさんの赤い柿が実っています。
「やった! 柿がなったぞ!」
かには大喜びしました。
ところが、かには木に登ることができません。
どうしたものかと困っていると、猿がやってきました。
「ぼくが取ってあげようか?」
「本当かい? ありがとう!」
猿はするすると木に登っていきました。
そして、真っ赤に熟した柿を一つ取りました。
「おいしそうだなあ。」
ぱくり。
猿は自分で食べてしまいました。
もう一つ取って、ぱくり。
また一つ取って、ぱくり。
「猿さん、ぼくにも柿を取っておくれよ。」
かにが下から呼びかけました。
すると猿は、まだ青くて固い柿を取りました。
「ほら、これでも食べろ!」
猿が投げた青い柿は、かにに当たってしまいました。
「いたい!」
かにはその場に倒れてしまいました。
猿は、そのまま逃げていきました。
かにがひどい目にあったことを知り、仲間たちが集まってきました。
栗。
はち。
うす。
そして牛のふん。
「かにさんに、なんてひどいことをしたんだ。」
「みんなで猿をこらしめよう。」
仲間たちは相談して、猿の家で待つことにしました。
やがて、猿が家へ帰ってきました。
猿が火のそばへ近づくと――
パチン!
熱くなった栗がはじけました。
「あちちち!」
驚いた猿が逃げようとすると、
ブーン!
はちが飛んできました。
「いたたた!」
慌てた猿は外へ飛び出そうとしました。
ところが、足元には牛のふん。
つるん!
猿はすべって転んでしまいました。
そこへ、うすがどしん!
猿はとうとう降参しました。
「まいった! もう悪いことはしない!」
猿はかにのところへ行き、深く頭を下げました。
「ごめんなさい。欲張って、ひどいことをしてしまった。」
こうして、猿は自分のしたことを謝りました。
おしまい。
登場人物
かに
柿の種を大切に育てる働き者です。実った柿を取ってもらおうと猿に頼みます。
猿
かにのおにぎりと柿の種を交換します。柿が実ると、おいしい柿を独り占めしてしまいます。
栗
かにを助ける仲間の一人です。猿をこらしめるために力を貸します。
はち
かにのために、栗たちと一緒に猿の家で待ち構えます。
うす
かにを助ける力強い仲間です。
牛のふん
仲間たちと一緒に、猿をこらしめる作戦に加わります。
教訓
- 欲張って自分だけが得をしようとすると、誰かを傷つけてしまうことがある。
- 仲間が困っているときに助け合う姿が描かれている。
- 自分が悪いことをしたときには、きちんと謝ることも大切。
親子で話したいポイント
- 猿はどうして柿を独り占めしてしまったのかな?
- かには、どんな気持ちだったと思う?
- 仲間たちは、どうしてかにを助けようと思ったのかな?
- 悪いことをしてしまったとき、どうしたらいいと思う?
保育士向け活用ポイント
- 柿の種が芽を出し、大きな木へ育っていく場面から、植物の成長について興味を広げることができます。
- 栗、はち、うすなど個性的な登場人物が多く、劇遊びや発表会にも取り入れやすい作品です。
- 「仲間が困っていたらどうする?」と問いかけ、助け合うことについて考えるきっかけにもできます。
- 猿をこらしめる場面は、単純に仕返しを肯定するのではなく、かにが傷ついた気持ちや猿が謝る場面にも目を向けながら扱うとよいでしょう。


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