赤神と黒神

あ行
この記事は約4分で読めます。

むかしむかし、大きな山をはさんで二人の神様が暮らしていました。

山の東には赤神。

山の西には黒神。

赤神は真っ赤な衣をまとい、岩を持ち上げるほどの力を持っていました。

困っている人を見るとすぐに助けに向かう、勇敢な神様でした。

一方、黒神は真っ黒な衣をまとい、とても物知りな神様でした。

星の動きや風の流れ、川の水の行方まで知っていると言われていました。

しかし、二人は仲が良くありませんでした。

赤神は言います。

「難しいことを考えている暇があるなら、まず動けばよいのだ。」

すると黒神は答えます。

「力だけで解決しようとするから失敗するのだ。まず考えることが大切だ。」

会えばいつもこんな調子でした。

村人たちも、

「赤神さまは頼もしいけれど少し短気だなあ。」

「黒神さまは賢いけれど慎重すぎるなあ。」

と話していました。

そんなある夏のことでした。

何日も何日も雨が降り続きました。

山の木々は水をたっぷり吸い込み、川は今まで見たこともないほど大きく膨れ上がりました。

村人たちは不安そうに空を見上げます。

「このままでは川があふれてしまう。」

「田んぼも家も流されてしまうぞ。」

その夜、とうとう川の水が堤を越え始めました。

村中が大騒ぎになりました。

知らせを聞いた赤神はすぐに立ち上がりました。

「よし!わしが川をせき止めてやる!」

赤神は山へ駆け上がると、大きな岩を次々と持ち上げ、川へ運び始めました。

一つ、二つ、三つ。

巨大な岩が川へ積み上がっていきます。

けれど、水の勢いは想像以上でした。

岩を積んでも積んでも、水はその隙間をぬって流れてきます。

「くそっ!これでは間に合わん!」

赤神は歯を食いしばりました。

その頃、黒神も山の上から川を見つめていました。

黒神は風の向きと川の流れをじっと観察していました。

そして気づいたのです。

「このままでは川の流れが村へ向かってしまう。しかし、山の北側へ水を逃がせば助かるかもしれない。」

黒神は急いで赤神のもとへ向かいました。

「赤神よ、岩を積む場所が違う。」

「何だと?」

「ここを止めても無駄だ。もっと上流で川の向きを変えるのだ。」

赤神は眉をひそめました。

「そんなことをしている時間はない!」

しかし黒神は静かに言いました。

「私を信じろ。」

赤神は少し考えました。

そして大きくうなずきました。

「わかった。やってみよう。」

赤神は黒神の指示する場所へ向かいました。

そして大きな岩を運び始めます。

黒神は風の向きと水の流れを見ながら、

「もう少し右だ!」

「次はそこを積め!」

と声をかけました。

二人は夜通し働き続けました。

やがて夜明けが近づいた頃。

ゴォォォッ!

川の流れが少しずつ変わり始めたのです。

水は村ではなく、北側の広い原っぱへ流れていきました。

村人たちは歓声をあげました。

「助かった!」

「村が流されずにすんだ!」

赤神はその場に座り込み、大きく息を吐きました。

黒神も珍しく笑顔を見せました。

赤神が言いました。

「お前の知恵がなければ村は助からなかった。」

すると黒神は答えました。

「いや、お前の力がなければ岩を運ぶことはできなかった。」

二人は顔を見合わせました。

そして初めて声をあげて笑ったのでした。

それ以来、赤神と黒神はよく力を合わせるようになりました。

大雪が降れば赤神が道を開き、黒神が安全な道を考えました。

日照りが続けば黒神が雨雲を呼ぶ方法を探し、赤神が山を越えて雲を運びました。

村人たちは二人の神様をとても大切にしました。

毎年秋になると、収穫を祝うお祭りが開かれます。

村の東には赤い旗。

村の西には黒い旗。

そして祭りの最後には、子どもたちがこう叫ぶのでした。

「赤神さま、ありがとう!」

「黒神さま、ありがとう!」

山の上では今日も二柱の神様が村を見守っています。

力のある者と知恵のある者。

違うからこそ支え合える。

赤神と黒神は、それを村人たちへ教え続けているのでした。

おしまい。

登場人物

  • 赤神
    力持ちで勇敢な神様。困っている人を放っておけない性格。
  • 黒神
    知恵深く慎重な神様。物事をよく観察してから行動する。
  • 村人たち
    山のふもとの村で暮らしている人々。

教訓

  • 人にはそれぞれ得意なことがある。
  • 力だけでも知恵だけでも大きな問題は解決できない。
  • 違いを認め合い、協力することが大切である。

親子で話したいポイント

  • 自分の得意なことは何かな?
  • お友だちの得意なことは何だろう?
  • 一人では難しくても、みんなで協力してできたことはあるかな?

保育士向け活用ポイント

  • 「協力」「役割分担」「チームワーク」をテーマにした活動につなげやすい作品です。
  • 運動が得意な子、製作が得意な子など、それぞれの良さを認め合う活動の導入として活用できます。
  • 異年齢保育やグループ活動の前の読み聞かせにもおすすめです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました