あらすじ
むかし、アリババという貧しい木こりがいました。
ある日、森で仕事をしていたアリババは、大勢の男たちが馬に乗ってやってくるのを見つけます。
男たちは40人の盗賊でした。
アリババが木陰に隠れて見ていると、盗賊たちは大きな岩の前に立ち、
「ひらけ、ごま!」
と唱えます。
すると岩が動き、その奥から秘密の洞窟が現れました。
盗賊たちが去ったあと、アリババも同じ言葉を唱えて洞窟へ入ってみます。
そこには、見たこともないほどたくさんの金貨や宝石が隠されていました。
アリババは必要な分だけ宝を持ち帰りますが、やがて盗賊たちは何者かが洞窟へ入ったことに気づきます。
アリババを探し出し、宝の秘密を守ろうとする盗賊たち。
そんな危機からアリババと家族を救ったのは、召使いのモルジアナの知恵と勇気でした。
本文
むかしむかし、アリババという貧しい木こりがいました。
アリババは毎日、森へ出かけて木を切り、それを町へ運んで売って暮らしていました。
決して裕福ではありません。
けれど、アリババは毎日まじめに働いていました。
ある日のことです。
アリババはいつものように森へ入り、木を切っていました。
こん。
こん。
静かな森に、木を切る音が響きます。
しばらく仕事をしていると――。
どこからか、たくさんの馬のひづめの音が聞こえてきました。
ぱからっ。
ぱからっ。
ぱからっ。
「なんだ?」
アリババは手を止めました。
音はどんどん近づいてきます。
それだけではありません。
男たちの声も聞こえてきました。
「誰か来る……。」
何となく嫌な予感がしたアリババは、急いで大きな木の陰に隠れました。
息をひそめて様子を見ていると――。
森の奥から、次々と馬に乗った男たちが現れました。
一人。
二人。
十人。
二十人。
それどころではありません。
全部で40人もいます。
男たちは馬から降りると、荷物を抱えて大きな岩の前へ集まりました。
アリババは木陰から、そっと様子をうかがいました。
「いったい何をするんだ……?」
やがて男たちの一人が、大きな岩の前に立ちました。
そして、はっきりとした声で言いました。
「ひらけ、ごま!」
その瞬間――。
ごごごご……。
「えっ?」
アリババは目を見開きました。
動くはずのない大きな岩が、ゆっくりと横へ動き始めたのです。
岩の奥には、暗い洞窟の入口が現れました。
男たちは荷物を持って、その中へ入っていきます。
しばらくすると、男たちは再び洞窟から出てきました。
そして岩の入口を閉じると、馬に乗って森の向こうへ去っていきました。
ぱからっ。
ぱからっ。
馬の音が遠ざかっていきます。
森には、再び静けさが戻りました。
アリババはすぐには動きませんでした。
「もう行ったのか……?」
しばらく待ちました。
何の音も聞こえません。
アリババは木陰から出ると、恐る恐る大きな岩へ近づきました。
さっきまで、ここに洞窟の入口があったはずです。
けれど今は、ただの大きな岩にしか見えません。
アリババは思い出しました。
「確か……。」
盗賊が言っていた言葉です。
アリババは岩の前に立ちました。
少し緊張しながら――。
「ひらけ、ごま!」
すると。
ごごごご……。
大きな岩が動き始めました。
「本当に開いた……!」
目の前に、暗い洞窟が現れます。
アリババは少し迷いました。
けれど、中がどうなっているのか気になって仕方ありません。
ゆっくりと洞窟へ入りました。
ひんやりとした空気が流れてきます。
一歩。
また一歩。
洞窟の奥へ進んでいくと――。
「これは……!」
アリババは立ち止まりました。
そこには、信じられないほどたくさんの宝物がありました。
山のように積まれた金貨。
きらきらと輝く宝石。
美しい飾り物。
見たこともないような品々。
洞窟いっぱいに宝物が隠されていたのです。
「さっきの男たちは……盗賊だったのか。」
アリババはようやく分かりました。
ここは、40人の盗賊たちが奪った宝物を隠している秘密の洞窟だったのです。
アリババは辺りを見回しました。
これだけの宝があれば、もう貧しい暮らしをしなくてもすむかもしれません。
けれど、すべてを持ち帰ることなどできません。
それに、盗賊たちに見つかれば大変です。
「少しだけにしよう。」
アリババは必要な分だけ宝を持ちました。
そして急いで洞窟の外へ出ました。
秘密の言葉を唱えると、大きな岩は再び閉じました。
アリババは何度も後ろを振り返りながら、家へ帰りました。
それからしばらくして――。
40人の盗賊たちが、再び洞窟へ戻ってきました。
いつものように岩を開き、中へ入ります。
ところが。
「待て。」
一人の盗賊が宝の山を見つめました。
「どうした?」
「宝が減っている。」
盗賊たちは辺りを調べました。
確かに、前に来たときより宝が少なくなっています。
「おかしい。」
「俺たち以外に、この場所を知っている者はいないはずだ。」
盗賊たちの表情が変わりました。
「誰かが秘密の言葉を知ったんだ。」
洞窟の中に、重い沈黙が広がりました。
そして盗賊たちは、秘密の洞窟へ入った人物を探し始めました。
「見つけ出せ。」
「この秘密を知っている者を、そのままにしておくわけにはいかない。」
盗賊たちは町へ向かいました。
やがて、少しずつ手がかりを集めていきます。
そして――。
とうとうアリババの家へ近づいてきました。
もちろん、アリババは盗賊たちが自分を探していることを知りません。
しかしアリババの家には、モルジアナという召使いがいました。
モルジアナは、とてもよく周りを見ている女性でした。
あるとき、家の近くに見慣れない男がいることに気づきました。
「誰だろう……。」
何となく様子がおかしいのです。
男はただ道を歩いているように見えます。
けれど、何度もアリババの家を見ています。
モルジアナはすぐに声をかけたりはしませんでした。
まず、静かに様子を見ることにしました。
その後も、不思議なことが続きました。
見知らぬ人影。
家の周りを探るような動き。
そして、どこか不自然な印。
モルジアナは考えました。
「誰かが、この家を狙っている。」
けれど、相手が誰なのかはまだ分かりません。
そこでモルジアナは、慌てずに一つずつ確かめていきました。
そしてついに――。
「盗賊たちだ。」
アリババが洞窟で見た40人の盗賊。
その盗賊たちが、アリババを探し出したのです。
「このままでは危ない。」
モルジアナはアリババたちを守る方法を考えました。
相手は40人もの盗賊です。
まともに力で戦えば、とてもかないません。
だからこそ、モルジアナは頭を使いました。
盗賊たちが何をしようとしているのか。
どこに隠れているのか。
いつ動こうとしているのか。
注意深く様子を見ながら、盗賊たちの企みを一つずつ見抜いていきます。
盗賊たちは、アリババたちに気づかれていないと思っていました。
けれどモルジアナは、すでに危険が近づいていることに気づいていました。
夜になりました。
辺りは静まり返っています。
家の外は暗く、遠くで風の音が聞こえます。
ざわざわ……。
モルジアナは耳を澄ませました。
何かがおかしい。
いつもの夜とは違う気配がします。
「来る……。」
モルジアナは落ち着いて行動しました。
慌てて大声を出せば、盗賊たちに気づかれてしまいます。
そこで何も知らないふりをしながら、相手より先に動きました。
盗賊たちが考えていた計画を利用し、その企みを失敗させたのです。
やがて――。
盗賊たちの計画は崩れました。
アリババと家族は守られました。
けれど、危険がすべてなくなったわけではありません。
盗賊たちの中には、まだアリババを狙おうとする者がいました。
その人物は、自分が盗賊だと気づかれないように姿を変え、アリババへ近づこうとしました。
アリババは気づきません。
しかし――。
モルジアナは違いました。
「この人……。」
どこかがおかしい。
話し方。
振る舞い。
そして、ほんの小さな違和感。
モルジアナは注意深く相手を見ました。
そして、その正体に気づいたのです。
「盗賊だ。」
モルジアナは今回も慌てませんでした。
家族に危険が及ばないよう、相手に気づかれないまま行動します。
そしてモルジアナの機転によって、盗賊たちの最後の企みも失敗しました。
ようやく、アリババと家族に平穏な日々が戻ってきました。
アリババは、モルジアナに言いました。
「ありがとう。」
もしモルジアナが小さな違和感を見逃していたら。
もし恐ろしい盗賊たちを前に、慌ててしまっていたら。
どうなっていたか分かりません。
アリババは秘密の洞窟で手に入れた宝物を思い出しました。
金貨。
宝石。
美しい品々。
けれど今、アリババのそばにいるのは、自分と家族を危険から守ってくれたモルジアナでした。
静かな夜。
もう、家の周りに怪しい人影はありません。
アリババたちは、ようやく安心して暮らせるようになりました。
おしまい。
登場人物
アリババ
毎日森で木を切って暮らしている貧しい木こり。偶然40人の盗賊たちの秘密を知り、「ひらけ、ごま」の言葉で宝物が隠された洞窟へ入ります。
モルジアナ
アリババの家に仕える賢い女性。周囲の小さな違和感から盗賊たちの企みに気づき、力ではなく知恵と機転を使ってアリババと家族を守ります。
40人の盗賊
森の中にある秘密の洞窟へ宝物を隠している集団。「ひらけ、ごま」という秘密の言葉を使って洞窟へ出入りしています。宝が減っていることに気づき、秘密を知った人物を探し始めます。
教訓
大きな力を持っていなくても、周囲をよく見て冷静に考えることで、危険を避けたり問題を解決したりできることがある。
目の前のものに夢中になりすぎず、その先にどんな危険があるのかを考えることも大切。
一人で解決しようとするだけではなく、周囲の人の知恵や力に助けられることもある。
親子で話したいポイント
アリババは、どうして秘密の洞窟を見つけることができたのかな?
モルジアナは、どうして盗賊たちの企みに気づくことができたのだろう?
力が強くなくても、知恵が役に立つのはどんなとき?
もし秘密の洞窟いっぱいの宝物を見つけたら、どうする?
自分にとって、宝物よりも大切だと思うものは何?
保育士向け活用ポイント
「よく見る」「考える」「困ったときに工夫する」といった問題解決の力を考える題材として活用できます。
特にモルジアナが小さな違和感に気づき、相手の様子をよく見ながら行動する展開から、「何かいつもと違うと感じたらどうする?」「困ったときには誰に相談する?」と、安全について考える活動にもつなげられます。
また、「ひらけ、ごま」という分かりやすい秘密の言葉を使って、宝探しごっこや謎解き遊びへ展開することもできます。子どもたち自身が秘密の合言葉や宝の地図を考えることで、想像力を生かした遊びにも広げられます。


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