山の背くらべ|世界の名作・昔話(日本の昔話・伝説)

日本の昔話

あらすじ

むかしむかし、日本の山々がまだ今とは少し違った姿をしていたころのお話です。

山たちはそれぞれ、自分の高さに自信を持っていました。

「あの山より、わたしのほうが高い。」

「いやいや、一番高いのはわたしだ。」

そんなことを言いながら、山々はたびたび背くらべをしていました。

ある日、いったいどの山が一番高いのか、みんなで比べてみることになります。

そこで話題になったのが、空高くそびえる富士山でした。

山々が見上げてみると、その頂はずっとずっと高いところにあります。

「これはかなわない。」

山たちは驚きました。

日本各地には、山と山が高さを競ったというさまざまな「山の背くらべ」の伝説が残されています。

本文

むかしむかし、日本の山々がまだ今とは少し違った姿をしていたころのお話です。

遠くまで山が連なり、その間を川が流れ、深い森が広がっていました。

朝になれば、山の向こうから太陽が昇ります。

夕方になれば、山の頂が赤く染まります。

そんな山々には、それぞれ自慢がありました。

ある山が言いました。

「見てごらん。わたしはこんなに高いぞ。」

すると、隣の山が言い返します。

「何を言っている。わたしのほうが高いじゃないか。」

また別の山も負けてはいません。

「いやいや、一番高いのはわたしだ。」

山々はみんな、自分こそ立派な山だと思っていました。

遠くの山を眺めては、

「あの山より、わたしのほうが高い。」

雲が頂にかかれば、

「ほら、こんなに空の近くまで届いているぞ。」

そんなことを言って、自分の高さを自慢します。

けれど、遠くから眺めているだけでは、本当はどの山が一番高いのかよく分かりません。

「それなら、背くらべをしてみようじゃないか。」

ある山が言いました。

「それはいい。」

「やってみよう。」

山々は大騒ぎです。

「きっと、わたしが一番だ。」

「いや、わたしに決まっている。」

みんな自信満々でした。

ある日、山々はお互いの高さを見比べることにしました。

「わたしの頂を見てみろ。」

「いやいや、こちらのほうが空に近いぞ。」

「そんなことはない。」

あちらでも、こちらでも、自分の高さを自慢する声が聞こえてきます。

けれど、なかなか一番は決まりません。

すると、一つの山が言いました。

「そういえば、もっと高い山があるという話を聞いたことがあるぞ。」

「もっと高い山?」

「どこにいるんだ?」

山々はざわめきました。

「富士山だ。」

その名前を聞いて、山々は遠くを眺めました。

そこには、大きな山がそびえていました。

すうっと空へ向かって伸びる美しい姿。

その頂は、ほかの山々よりもずっと高いところにあります。

山々はそろって富士山を見上げました。

「ずいぶん高いな……。」

「頂があんなところにあるぞ。」

「本当に大きな山だ。」

さっきまで、

「わたしが一番だ。」

と言っていた山々も、思わず黙ってしまいました。

しばらくして、一つの山が言いました。

「これはかなわないな。」

すると、別の山も言いました。

「うん。富士山は高い。」

山々は、空へ向かってそびえる富士山を眺めました。

けれど、山々をよく見てみれば、違うのは高さだけではありません。

ある山には、木々がたくさん生い茂った深い森があります。

春になれば新しい葉が芽吹き、夏には濃い緑に包まれます。

秋には赤や黄色に染まり、冬には雪をかぶります。

また、ある山にはきれいな水が湧いていました。

山から流れ出した水は小さな川になり、やがて里へと流れていきます。

その水を、動物たちも人々も使っていました。

ほかの山には、昔から人々が大切にしてきた場所がありました。

山には神さまがいると考えられ、人々が山を見上げて手を合わせることもありました。

富士山には、富士山の姿があります。

森に包まれた山には、その山の姿があります。

水を生み出す山にも、人々に大切にされてきた山にも、それぞれ違った姿がありました。

山々は、もう一度お互いを眺めました。

同じ形の山は、一つもありません。

丸い山。

とがった山。

木々に覆われた山。

岩の目立つ山。

遠くからでもよく見える山もあれば、いくつもの山に囲まれて静かに立っている山もあります。

風が吹きました。

ざわざわ……。

山の木々が揺れます。

空には雲が流れていきました。

山々はそれぞれの場所に立ち、今日も静かに空を見上げています。

そして富士山もまた、遠くの空の下に高くそびえていました。

おしまい。

登場人物

山々
それぞれに高さや形、自然などの違いを持つ山々。自分こそ一番高いと考え、お互いに背くらべをします。

富士山
日本を代表する高い山として登場する存在。山々がその高さを見上げ、驚きます。

教訓

誰かと比べて一番になることだけが、その人の価値を決めるものではない。

山に高さや形、森や水などそれぞれ違った特徴があるように、一人ひとりにも違った良さがある。

誰かの得意なところを認めながら、自分が持っている良さも大切にしていくことができる。

親子で話したいポイント

山には、高さ以外にどんな違いがあるかな?

富士山を見たことはある? どんな形をしているかな?

自分の得意なことや好きなことは何だろう?

友達や家族の「すごいな」「素敵だな」と思うところはどこ?

もし自分が山だったら、どんな山になってみたい?

保育士向け活用ポイント

「高い・低い」「大きい・小さい」などの比較を楽しみながら、一人ひとりの違いに目を向ける活動へつなげられます。

積み木や箱を使って山を作り、「どの山が高いかな?」と比べたあと、高さだけでなく「形がおもしろい」「木がたくさんある山」「動物が住んでいそうな山」など、それぞれの作品の違いを楽しむ製作活動にも発展させられます。

また、日本地図を見ながら富士山や身近な地域の山を探したり、山の写真を見比べたりすることで、自然や地理への興味を広げることもできます。

身体を大きく伸ばして高い山を表現したり、丸い山や小さな山を体で表したりするなど、身体表現の活動にも活用できます。

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